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グーグル、進む退職勧奨

米グーグルの大規模な人員調整の波が日本に及び、注目を集めている。同社は全世界の従業員の6%にあたる1万2000人を削減すると発表。グーグル日本法人も一部従業員に退職を勧める「退職勧奨」に入ったとみられる。今後、整理解雇に発展すれば、日本の司法で認められるかが注目される。解雇を回避するための十分な努力など、会社側が丁寧な対応をとるかが焦点になる。
「社員が互いに尊重しあう企業文化を守りたい」。3月.8日、東京都渋谷区のグーグル日本法人前。日本法人の社員で構成する労働組合「グーグルジャパンユニオン」が行った要望活動で、30代の英国人エンジニアが話した。ユニオンの本部にあたる東京管理職ユニオンの神部紅氏によると日本法人は3月はじめ、一部社員にメールで「退職を14日以内に決めれば手当を増額する」などと退職勧奨をし面談も始めたという。
 労組の結成で、退職勧奨は個人と労組の2方向で進める必要が生じた。労組との交渉は労働組合法に沿った団体交渉となる。初交渉は3月17日に実施された。
(日本経済新聞 4月10日)

 退職勧奨の焦点は対象社員の感情を害さないことだ。厚生労働省は「労働者が自由意思により、退職勧奨に応じる場合は問題となりませんが、使用者による労働者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は、違法な権利侵害に当たるとされる場合があります」と注意を喚起する。
 退職勧奨が違法と認定された判例もある。最高裁の判例(1980年7月10日)で、「ことさら多数回、長期にわたる退職勧奨は、いたずらに被勧奨者の不安感を増し、不当に退職を強要する結果となる可能性が高く、退職勧奨は、被勧奨者の家庭の状況、名誉感情等に十分配慮すべき」と指摘。そのうえで、「勧奨者の数、優遇措置の有無等を総合的に勘案し、全体として被勧奨者の自由な意思決定が妨げられる状況であった場合には、当該退職勧奨行為は違法な権利侵害となる」と断じた。
 会社側はどう臨めばよいのだろうか。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する情報サイト「J-Net21」は、退職勧奨について「大切なポイントの一つは、会社側(経営者や人事担当者)が強硬に退職させようとしたり、威嚇的な態度を示さないこと」とクギを刺す。退職理由の合意形成については、次のように助言する。
「退職理由について、会社側が主張する理由に対し、本人にそこまでの自覚はなかったなど、会社側と本人の意識にギャップがある場合は、具体的な事実確認や話し合いを進めることによって、その溝を埋めて行く作業が必要」
 かつて数社の退職勧奨を手がけた社会保険労務士は「会社側に誠意を尽くすことを指示した。本人は職を失うのだから、割増退職金を払えばよいという問題ではない」と強調していた。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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