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利益を社員に還元する「分かち合う資本主義」

従業員の頑張りには本当に感謝している。賃金は4月からベースアップと定期昇給で5%強引き上げる。創業50周年記念の特別感謝金も2月に支給した。さらに経営計画発表会で私の持ち株を社員や一部アルバイト従業員にも無償譲渡すると発表した。会社が成長すればその利益を社員に還元することで、一人ひとりが経営者の気持ちで仕事をするようになる。私はこれを「分かち合う資本主義」と呼んでいる。自分一人が豊かになっても仕方がない。一緒に働く人が生活の質を高めていけること、そして地域や株主が喜んでくれることを大切にしたい。
(日本経済新聞 4月7日)

 この記事は「こころの玉手箱」という連載コラムに掲載されたもので、著者はラーメン店チェーン「日高屋」を運営するハイデイ日高の神田正会長。保有株式を無償譲渡する趣旨について「長い間会社の発展のために尽力し、共に働いてきた従業員への感謝の気持ちを表し、変わることのない創業の精神と経営理念が継承され、更なる発展を遂げて欲しいという願いを込めて」と発表している。
 神田会長が保有株式の一部を従業員に無償譲渡するのは、2018年につづいて2回目である。実施の予定時期は6月。譲渡する株式数は約20万株で、4月5日現在の時価増額は約4億2000万円。対象者は役員と正社員、さらに条件を満たしたパートアルバイト従業員の合計約1100人である。
 同社には「焼鳥日高」という業態がある。2014年、神田会長がテレビ番組でこの業態を開発した理由を話していた。おおむねこんな内容である。
「いっしょに働いてきた社員が60歳になったという理由で会社を去ってしまうのは嫌だ。
これからもいっしょに働いていきたいが、ラーメン店の調理業務は60歳を過ぎると体力的に厳しいので、体力の負担を軽減できる焼鳥店を開発した。この店で働きつづけてほしい」
 焼鳥日高を開発したのは再雇用の受け皿だけでなく、新たな市場開拓という目的もあるのだろうが、社員の人生を大切にする姿勢がうかがえたものだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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