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管理職も人材確保へ賃上げ OKIや協和キリン

優秀な人材の獲得競争が激しい中、一般社員だけでなく、管理職の給与も引き上げる動きが相次ぐ。協和キリンやOKIは4月、過去にない水準で賃上げした。日本の春季労使交渉では、管理職の賃金は議論の対象外になりやすい。そのため伸びが停滞し、一部では一般社員の給与との「逆転現象」も起きる。米国や中国など海外より見劣りする日本の管理職の賃金水準について、歴史的なインフレ下で改善がようやく進みそうだ。
製薬大手の協和キリンは4月から管理職を含め、基本給を底上げするベースアップ(ベア)を実施した。2008年の発足後、初めてだ。ベアに相当する賃金改善額は1月2千円で、管理職平均で2%程度の上昇になる。さらに管理職にも定期昇給を導入した。従来は一般社員にベアを実施してきたが、23年は管理職の賃上げに踏み切った。背景には急な物価高のほか「採用の競争力を高め、会社全体のモチベーションを上げる狙い」(同社)がある。
(日本経済新聞 4月7日)

 若手社員の管理職志向が低下しはじめたのは、ふた昔ぐらい前からだ。責任の重さと報酬が見合わないと思うようになったのだ。出世競争を勝ち抜いて「長」の付く肩書を獲得しても、残業手当が支給されないので、苦労を強いられるわりに手取り額にさほどの差が出ない。ならば現状維持でよいのではないかと。
 要はギラギラしなくなったのだが、国際比較をしても。日本のビジネスパーソンの管理職志向は低い。
パーソル総合研究所が2022年2~3月、アジア太平洋地域(APAC)と欧米地域を含めた世界18ヵ国・地域を対象に「グローバル就業実態・成長意識調査」を実施した。一般社員・従業員に対して、現在の勤務先で管理職になりたいか。この問いに対して「管理職になりたい」と答えた割合は、インド(90.5%)がもっとも高く、ベトナム(87.8%)、フィリピン(80.6%)と続いた。一方、日本は19.8%で最下位となった。
それだけ日本の活力が低下したのだ。管理職の賃上げを大胆に進めて、若手社員を誘導することが必要だろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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