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働き方改革、勤務医に逆効果 名ばかり「宿日直」警戒

2024年4月から始まる「医師の働き方改革」の実効性に、現場の勤務医から不安の声が上がっている。無制限だった残業時間に上限を設けるが、実施が迫っても本来の業務効率化に向けた動きは道半ばだ。書類上の労働時間を減らすだけの対策が広がっているとの声もある。本来の目的とは逆に医療の質低下につながる懸念もくすぶる。
一般の労働者から4〜5年遅れて始まる医師の働き方改革は、それまでは制限がなかった医師の残業時間の上限を年960時間とする特例が設けられるが、36年には特例もなくなる。診察を求められた際には正当な理由がなければ拒否してはならないとする「応召義務」などの特殊性を踏まえるため先送りされたが、実施までいよいよ1年に迫った。
複数の病院を掛け持ちし、宿直などもこなす今の多くの勤務医の働き方では、残業規制をクリアすることは難しい。そこで注目されているのは、労働基準監督署の許可を受ければ、夜間や休日に働いても勤務時間に算入しなくても良いとする「宿日直許可」だ。一般の労働者と働き方の著しく異なる業種を対象に、例外措置として設けられた。
(日本経済新聞 3月27日)

勤務医の宿日直には①ほぼ診療がない②一定の頻度で診療が発生する③日中と同程度に診療が発生する――この3パターンがある。①は慢性期病病棟、②は二次救急病院、③は三次救急病院・総合周産期母子医療センター・ICUなどが該当する。
宿日直許可取得の焦点について、ある病院経営者は次のように指摘する。
「① のパターンは1949年の通知内容でも宿日直許可を取れる。③のパターンは未来永劫取
れないのでシフト勤務をする以外にない。問題は②で、このパターンの病院がかなり多いが、どれだけ宿日直許可を取れるかが2024年4月にソフトランディングできるかの決め手になってくる」
2022年4月に厚生労働省が相談窓口を開設したことから、宿日直許可を取得やすい環境になった。労働基準監督署の対応に問題があれば、厚労省が対応の改善を指導するという。
許可を取得すれば大学病院が医師を派遣しやすくなるが、許可を取得しなければ派遣を得られにくく医師不足に直面しかねない。
24年4月まで残された期間はわずか1年。二次救急病院の取得は進んでいるが、ソフトランディングできるかどうかは不透明な状況だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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