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営業秘密の不正持ち出し、摘発過去最多 背景に進む人材の流動化

営業秘密を不正に持ち出したとして、昨年(2022年)1年間に全国の警察が不正競争防止法違反で摘発した事件は29件あった。年間摘発件数は右肩上がりで増えており、前年(23件)から6件増。統計をとり始めた13年以降で過去最多だった。警察庁が23日、発表した。
逮捕・書類送検されたのは45人で、うち逮捕者は17人。昨年9月には、退職して独立
する前に勤務先の製品の情報を不正に持ち出したとして、兵庫県警が会社役員の男を逮捕している。  
書類送検された法人は1社で、回転ずし大手「かっぱ寿司」の運営会社。昨年9月に社長らが以前の勤務先の回転ずし事業に関するデータを持ち出したとして警視庁に逮捕され、運営会社も組織的にデータを利用したと判断された。  
被害企業などからの相談件数も高い水準で推移しており、22年は59件。過去最多の17年には72件あったほか、21年には60件の相談が寄せられている。  
厚生労働省の22年版の労働経済白書によると、転職者数は20、21年は新型コロナの影響で減少したものの、過去最多の353万人だった19年まで9年連続で増加。警察庁は摘発増加の背景に、転職が一般的になり人材の流動化が進んだことがあるとみている。
(朝日新聞デジタル 3月23日)

情報漏洩の行為者は、昔は産業スパイだったが、いまは転職者に移り変わっている。この問題はいくらモラルを問いても解決しない。転職者の心に魔が差す瞬間までモラルではコントロールできない。
物理的な対策が不可欠で、経済産業省も対策を示している。まずは適切なタイミングでのアクセス権の制限である。 退職時には、遅滞なく退職者の情報システムの利用者IDやアクセス権限を削除し、確実にIDカードや会社への入館証を回収するとともに、施錠された区域への解錠ができなくなっていることを確認する。
書類・記録媒体など持ち出しに対しては①秘密情報が記された会議資料等の適切な回収 ②秘密情報の社外持出しを物理的に阻止する措置③電子データの暗号化による閲覧制限等 ④遠隔操作によるデータ消去機能を有するPC・電子データの利用⑤コピー防止用紙やコピーガード付の記録媒体・電子データ等により秘密情報を保管 ⑥コピー機の使用制限――など。
ここまでは標準的な対策だが、意外なのはOB会の活用だ。経産省は諜報活動の手法であるヒューミント(人的情報収集術)を提示している。
たとえばOB名簿や中途退職者名簿の作成・定期的な更新を行ったり、OB会 開催を通じて退職者との交流機会を持ったりすることで、退職者の動向の把握に努めていることを認識させる。それだけではない。OB会に現役社員も参加する場合には、OBが現役社員から最新の情報を得る良い機会になってしまうこともあるので、参加する現役社員への注意喚起が重要であると諭している。
本来、OB会は旧交を温める場だが、情報漏洩も想定しなければならない時代になったのである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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