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介護のデジタル化で69 万人の介護人材需給ギャップ解消へ

介護分野での人材不足が叫ばれて久しい。厚生労働省は「2040 年には 69 万人の介護人材が不足する」 という試算結果を発表した。このままでは、多くの高齢者が必要な介護サービスを受けられない「介護難 民」となる恐れがある。 この問題を解決するためには、「介護需要の伸びの抑制」と「供給力の強化」を同時に進めることが重要 だ。需要抑制策としては予防医療のデジタル化によって疾病への罹患や重症化を防ぐことが有効である。 また、供給力強化のためには、介護のデジタル化が不可欠である。
 介護のデジタル化には見守りや記録の自動化などが挙げられる。デジタル化による効果は主に二つある。 一つは生産性の向上である。業務(タスク)の一部を機械代替したり、プロセスを改善し手間を省いたり することによってコストを下げることが可能だ。もう一つは生産性向上による処遇改善によって他業種か らの人材流入が見込める点だ。 当社の試算結果では、予防医療と介護のデジタル化によって、2040 年に生じる需給ギャップ 69 万人の 解消が期待できる。
(三菱総合研究所ニュースリリース 3月15日)

人材不足が深刻なのは介護業界だけではない。介護業界で人材確保をテーマに取り上げたシンポジウムや研究会では、もっぱら介護人材にしか視野が及んでいないが、他業界にも目を向けないと雇用状況全体を把握できない。
たとえば経済産業省の試算によると、IT人材-は30年に最大で79万人不足する。防災に備えて重要インフラ工事が増加する建設業界では、技能労働者が25年に最大で93万人不足すると国土交通省が試算している。物流業界の人手不足も深刻である。トラックドライバーの労働時間の上限が年間960時間に制限される“2024年問題”に直面するうえに、物流の小口多頻度化を背景に、人手不足が加速していく。
当然、人材の流入を促進するために処遇や就業体系の改善には、どの業界も取り組んでいる。人材の奪い合いが展開されるなかで、介護業界が他業界に打ち勝てるのだろうか。その可能性を見出せないだけに業務のデジタル化を進め、省人化を図ることが必須である。
ただ、一方でサービス提供側がデジタル化すれば、利用者側にもデジタル化が求められる。在宅介護の場合、利用者が子供世帯と同居していれば対応できても、老老世帯や独居世帯では難儀するだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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