Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

中小企業の賃上げ予定約6割 日商調査

日本商工会議所などは1日、令和5年春闘を巡る中小企業の動向調査の途中集計を明らかにした。東京都を中心とした493社のうち58・2%の287社が賃金の引き上げを予定し、賃上げ率の見通しが最近の消費者物価上昇率の約4%を上回る企業は実施予定のうち28・5%を占めた。
全国の中小企業6013社を対象に、日商と東京商工会議所が2月に実施した調査の一部を集計した。493社のうち従業員数100人以下は約9割を占め、101人以上が約1割。 部分集計のため「傾向がうかがえる参考程度」(日商)ながらも、賃上げを予定する企業の割合は、回答のあった全国約3200社のうち45・8%だった前年調査よりも、5年春闘は12・4ポイント高い。賃上げ予定のうち4%以上の賃上げ率を見込む企業も前年の6・1%と比べて22・4ポイント高い。
1日の記者会見で日商の小林健会頭は、取引価格へのコストの転嫁が一定程度進み、中小企業が賃上げの原資を確保できるようになってきたとの見方を示した上で「経済を循環させようという意気込みを感じて非常に心強く、まだ未定の企業も賃上げに勇気をもってほしい」と呼び掛けた。(産経新聞 3月1日)

春闘の正式名称は「春季生活闘争」だが、中小企業の社員にとって賃上げ要求はまさに生活闘争だ。雇用側は原資に余裕はないかもしれないが、公的支援制度の活用も検討しておきたい。賃上げ促進税制の検討である。
資本金1億円以下の中小企業の場合、雇用者全体の給与等支給額の増加額の最大40%が税額控除される。
適用対象は青色申告書を提出する中小企業者で、 適用期間は2024年3月31日までの事業年度。雇用者全体の給与等支給額が前年度比で2.5%以上増加すれば、30%が税額控除される。前年度比で1.5%以上増加すれば15%が税額控除される。さらに追加要件が設けられ、教育訓練費が前年度比で10%以上増加すれば、追加して10%が税額控除される。
一方、賃上げのニュースが連日報道されるなかで、非正規労働者も取り残されまいと動き出している。非正規労働者を組織する労働組合14団体で構成される「非正規春闘実行委員会2023」は、非正規労働者の10%の賃上げに加えて、政府に対して最低賃金時給1500円をめざす政策の実現を要求した。
しかし非正規労働者の要求を企業がどこまで受け止めるだろうか。政策の力で賃上げに導く以外にない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。