Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

中小と後継者、地銀が結ぶ

地方銀行が事業承継したい企業と経営者人材をつなぐ「サーチファンド」に資金を投じる動きが広がってきた。横浜銀行は3月、全国で初めて首都圏の中小企業の承継に特化したサーチファンドを設立する。2022年には野村ホールディングス系の投資会社のファンドに阿波銀行などが出資した。中小企業の新陳代謝を通じて地域経済の活性化に寄与しそうだ。
サーチファンドは、経営者になりたい「サーチャー」が経営したい企業を選び、ファンドからの投資を通じて経営権を取得し、企業の経営者として成長戦略を描く事業承継モデル。1984年に米スタンフォードビジネススクールの教授が提唱した概念とされ、プラーベートエクイティ(PE)の投資の形態の一つだ。
横浜銀行は3月1日、サーチファンドの普及に取り組むナショナルリサーチファンド(東京・港区)と共同で、総額10・5億円の「サーチファンド未来創造」を設立する。横浜銀行が10億円を出資し、1件あたり1億~2億円を投資する。(日本経済新聞 2月28日)

 地方銀行にとって地元企業の事業承継は深刻な問題だ。その対策のひとつとして着目されているのがサーチファンドの活用である。成否のポイントは承継対象企業にマッチしたサーチャー人材を発掘できるかどうか。
山口キャピタル(山口県下関市)が山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行、十六銀行、南都銀行、百十四銀行、愛媛銀行と協働して運用する「地域未来共創Searchファンド」はサーチャー人材の募集で、次のようにアプローチしている。
① 知識・能力を最大限に活かせていない「これまでの経営コンサルやMBAで培った能力を現職で活かせていますか?サーチャーとなり、経営者となることで自身の能力を最大限に活用できます」
② 0 →1の起業家には向いていない「0から事業を創ることには向いておらず、今あるものを使って改善・改革し、企業をバリューアップしていくことができます」
③ 将来的に地方で働きたい「将来的には地方で働きたいと思っているものの、報酬や給料水準が合わず見送っている。サーチャーとなり経営者となることで、リスクに見合った報酬を得ることができます」
サーチャーに任用されば経営権を取得できるが、事業承継は起業よりも難しい一面もある。よほどの実力者でない限り、自分から企業文化や業界体質に合わせることからはじめないと社員がついてこない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。