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社外副業は45%が禁止、壁高く

キャリアの選択肢を広げる仕組みとして、社外での副業も注目される。厚生労働省は2018年に社外副業の位置づけを「原則禁止」から「原則容認」に転じた。人手不足を補う狙いもある。
だが普及は道半ばだ。パーソル総合研究所(東京・港)の21年の調査では日本企業約1500社のうち、副業容認は55%で18年(51%)から微増にとどまる。45%の企業が社外副業を禁止し、「自社業務に専念してほしい」「疲労による業務効率の低下を懸念」との理由が多い。KDDIも社外副業は認めていない。
同調査で「現在副業している」と答えた社員は全体のわずか9%で、経験者は2割止まり。一方で未経験者の4割が副業に関心を寄せており、条件に合う副業の見つけ方や労務管理の煩雑さなど課題が多いようだ。
リクルートワークス研究所の奥本英宏所長は「まだまだキャリア形成に受け身の日本の働き手は、気軽に他の業務にチャレンジできる社内副業との相性が良い。企業側も社員の知見が社外に流出しないなどのメリットが大きい」とみる。
(日本経済新聞 2月22日)

昭和の時代にさかのぼるが、銀行を辞めて著述業に転じた人に「銀行に勤めながら執筆活動はできないのか?」と尋ねたことがあった。
「内規で金融専門誌への執筆は認められているが、その範囲まで。著書を出すことは副業とみなされて認められていなので、著書を出すために辞めた」
これは一例だが、副業はなかば会社への背信行為のように考えられていた。そのマインドを変えられない企業はいまだに多いようだ。
副業禁止を政府はどうみているのだろうか。厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で、副業・兼業を禁止または制限できる場合を例示している。
① 労務提供上の支障がある場合②業務上の秘密が漏洩する場合③競業により自社の利
益が害される場合④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合――そのうえで、禁止又は制限の妥当性については、個々のケースに応じて慎重に判断されるものになる」「労働者の希望に応じて、原則副業・兼業を認める方向で検討することが 望ましいと付言する。
 これでは弱い。副業を促進するには副業禁止を違法化するなどの強い措置が必要である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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