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地銀、人材定着に危機感 金融庁も採用・育成など初調査

全国の地方銀行が行員の離職防止対策に乗り出している。十六フィナンシャルグループ(FG)は35歳で部長になることも可能な新人事制度を導入する。肥後銀行などは基本給を一律に上げるベースアップ(ベア)を実施する。地銀では人口減少や低金利の長期化などで経営環境が厳しいうえ、年功序列色の強い組織体制を背景に離職が増えている。優秀な人材の獲得へ転換を急ぐ。金融庁も地銀の人的資本について初の調査に乗り出した。
十六FGは4月から、年功序列の要素を薄めた人事制度に改め、35歳で部長になることも可能とする。基本的な能力が高まれば等級の飛び級も可能だ。給与体系は、年齢によらず能力と庶務の組み合わせで給与が決まる仕組みとする。モチベーションを高める狙いだ。
伊予銀行も22年10月から新人事制度に移行した。総合職の職務領域を法人、個人、シップ(船舶)、プランニング、マーケット、テクノロジーなど8分野に細分化して、キャリアパスを想定しながら専門性を高められる仕組みを導入。ゼネラリストを重視した育成から、特定領域や得意分野を伸ばす育成へ見直す。
(日本経済新聞 2月1日)

 新卒入社者の4人に1人3年以内に退職する時代である。地方銀行も例外ではない。地方銀行への就職はその時点では“地元の就職勝ち組”だが、さまざまなストレスに直面する当人にはステイタスや高給に固執する心境には到底なれないだろう。優先したいのは目先の解放感だ。
 日本労働調査組合(東京都足立区)によると、銀行員の退職には5つの理由があるという。①体育会系の人間関係が辛い②ノルマが厳しい③勤務時間外で仕事に関する勉強が必要④転勤や異動が多い⑤そもそも銀行員に向いていなかった。
5つの理由を概観すると、銀行は滅私奉公の要素が色濃い職場のようだ。こうした実態は就職活動を進めていたときに把握できそうだが、かりに把握していても、リクルーターの巧みな説明で払拭されてしまうのだろうか。
退職者を減らすには退職理由に挙げられることを改善すればよいのだが、経営側の論理と折り合わなければ現状維持である。
一方、日本労働調査組合は、銀行員を辞めてよかったこと、後悔したことも示している。よかったことは「人間関係が改善した」「過酷なノルマやプレッシャーから解放された」「プライベートの時間を確保できるようになった」「ムダなお金を節約できた」「転勤や異動の不安が少なくなった」。
いまの悩みから解放されたのだが、一方で「給料が下がった」「福利厚生が悪くなった」
「社会的信用度が下がった」という後悔があるという。この程度のことは退職を決めた時点で織り込み済みのはずで、この程度の後悔ですむのなら、銀行を退職するハードルはかなり低いといえる。
 

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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