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転勤なして報酬を下げない新人事制度  ニトリHD

 ニトリホールディングスは2023年に転勤なしの新制度「マイエリア制度」を導入する。
就業する地域を一部に限定し、転居なく通勤が可能な制度で、対象者は入社から一定期間を経過した総合職社員。20代半ばから制度を利用できる。
 対象エリアは首都圏と関西圏で、今後拡大を予定している。利用期間に制限は設けず、いつでも申請・解除できる。制度を使用しても報酬は減額せず、役職も制限しない。
 ニトリグループは多方面のスペシャリスト育成のため「多数精鋭」の組織づくりをめざしており、人材力を高めるために、さまざまな部署や地域で経験を積むなど幅広い領域の
配転教育に基盤を置いている。本制度のポイントは、制度を利用する社員と利用しない社員との待遇差がない点。
 制度を利用する社員の待遇を調整するのではなく、転勤する社員の手当を充当するなど、転勤のインセンティブを高める施策の実行で、従業員のエンゲージメント向上のみならず、人材確保にもつながると考えている。
(ニトリホールディングス作成ニュースリリースを要約 2月22日)

 20年以上前と記憶しているが、全国紙の新入社員の間で配属希望部署が多かったのが出版局と話題になったことがある。理由は転勤がないからだという。
 転勤を望まない風潮は昔からつづいている。エン・ジャパンが2022年6月に実施した調査(回答・ 1万165名)には、64%が「転勤は退職のキッカケになる」と回答した。また
2割が「コロナ禍で転勤への意識が変化した」と回答し、30代以上は6割が転勤に対し否定的な一方で、20代の半数は肯定的な意識に変化した。
 転勤を命じられた場合に52%が承諾する意向で、19年より11ポイント減少した。コロナ禍での転勤、苦労したことの第1位は「人間関係の構築」だった。
 転勤は家族同伴なら子供が転校を繰り返す事態を招きかねいが、子どもが私立の小中学校に在校していれば転校という選択肢はなく、単身赴任せざるを得ない。単身赴任をすれば二重生活によって生活コストが増大する。
 01年のデータだが、アート引越センターの調査によると、単身赴任生活の1カ月の生活費で最も多い水準は12~14万円。一方、民間企業の単身赴任手当・別居手当は、厚生労働省の調査(2019年)では平均4万7600円。生活費は赴任地によって異なるが、いずれにしても持ち出しである。
 子供の私立中高への進学ブームや物価高を踏まえれば、転勤を望まない社員は増えていく。 ニトリホールディングスのような転勤の選択制は時代の要請ともいえる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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