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金融庁が地銀に賃上げ促す、人材投資の検討を働き掛け-関係者

金融庁が、地方銀行に対し従業員の賃上げを促していることが分かった。政府はインフレ率を超える賃上げの実現を企業に求めており、その一環とみられる。事情に詳しい関係者が匿名を条件に明らかにした。
関係者によると、金融庁は全国の地銀に対し、事業の持続可能性を高めるため人材への投資が重要であると伝え、賃上げなど検討するよう働き掛けた。金融庁の担当者は、さまざまな方法で地銀とコミュニケーションを取っていると述べたが、具体的なやりとりの詳細についてはコメントを控えた。
この動きに対し、複数の大手地銀幹部は、物価上昇率が41年ぶりの高水準で推移していることなどから、賃上げを検討していると話した。ただ、そのうちの一人は、報酬は経営戦略の問題であり、規制当局がそれに口出しすべきではないと述べた。(ブルームバーグ 2月2日)

 三井住友銀行は、2023年4月に入行する新卒の初任給を5万円引き上げる。 初任給の引き上げは07年以来16年ぶりで、大卒の初任給は25万5000円、大学院卒は28万円に引き上がる。
 護送船団の時代はとうに過ぎ去ったとはいえ、銀行は横並びの業界である。横並びのほうが金融市場も安定する。金融庁が地方銀行に賃上げを要請したのは、内政干渉には違いないが、これは金融市場に波風を発生させない意図だろう。
 一方、昨年は実質賃金が減少した。厚生労働省の毎月勤労統計調査で、物価の影響を考慮した「実質賃金」は前年比0・9%減。2年ぶりに減少に転じた。要因は「名目賃金」の増加が、物価の伸びに追いつかなかったこと。名目賃金にあたる現金給与総額は2・1%増と2年連続で増え、増加幅は1991年以来の大きさだったが、物価高に飲み込まれてしまったのである。
 今年は電気料金が大幅に値上がりする。物価高もつづいている。5~10%の賃上げ対象となる給与所得者はよいが、中小企業の社員など賃上げされない給与所得者は苦難の年を送らざるを得ない。学生の大企業志向はいちだんと強まるのではないか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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