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看護師・介護士の賃上げ検証へ 経営状況の報告義務化

厚生労働省は看護師や介護士の賃上げに向け、医療法人や介護事業者への監督を強める。2023年度以降、事業者に経営状況の報告を義務付け、処遇改善の取り組みを検証する。これまで進めてきた報酬改定や事業者への補助に対して、現場に行き渡っているかが分かりにくいとの見方があった。就業者の1割強を占める医療・福祉分野の賃金の底上げを目指す。
医療や介護は人手不足が深刻だ。厚生労働白書によると、40年には医療・福祉分野で96万人の人材不足が見込まれる。看護や介護は専門の資格を求められるうえに、仕事は厳しい。処遇を良くしなければ、十分な人材を集められない。
政府は診療報酬と介護報酬の改定や補助金で賃上げに取り組んできた。介護は09年度の報酬改定から賃上げ分が反映され、19年度の月額の報酬は08年度に比べ7万5千円の引き上げとなった。
実際の賃金には十分に反映していないもようだ。公的価格評価検討委員会(座長、増田寛也日本郵政公社社長)がまとめた月額賃金(賞与含む)は20年までの8年間の増加額が3万8千円にとどまった。
(日本経済新聞 1月31日)

介護職員処遇改善加算の支給対象者は介護福祉士だが、加算分が本人の口座に振り込まれるわけではない。事業者に振り込まれる。事業者がそっくり介護福祉士に支払うことはほとんどない。
「介護現場は介護福祉士だけでなく、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、事務職など各職種がチームを組んで働いているので、職員全体の処遇改善の観点から介護福祉士以外の職種にも加算を分配して支給している」(社会福祉法人幹部)
 そんな事情があるのだ。
 ところで、さる2月1日に放映されたNHK「クローズアップ現代」で、オーストラリアの介護施設で働く日本人看護師の月収が90万円で、毎月50万円を貯金していると紹介された。資金を貯めて、いずれ日本に帰国して訪問看護ステーションを立ち上げるプランを抱いているという。
番組に出演した経済学者は、様々な職種の若者がオーストラリアに“出稼ぎ”に渡る行動を日本の賃金水準が低い現状への「静かなストライキ」と評していた。これだけの賃金格差があると、処遇改善措置を期待するのではなく、出稼ぎに向かう若い介護人材が増えるのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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