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経団連「2023 年版 経営労働政策特別委員会報告」に対する連合見解

 

経団連が1 月 17 日に発表した「2023 年版 経営労働政策特別委員会報告-『人への 投資』促進を通じたイノベーション創出と生産性向上の実現」について、連合が見解を発表した。
 評価できる点は①2023 年は「大きな転換点」という時代認識②「人への投資」としての「賃金引上げ」③中小企業の賃金引上げとその環境整備。相違点は▽5%程度の賃上げ目標に対する見解▽短期的対応のみならず持続的な賃上げと月例賃金へのこだわり▽短期利益追求の企業行動からの転換。
 さらに裁量労働制について、新たに銀行と証券会社におけるM&Aアドバイザー業務が専門業務型に追加されたことに「不適切な運用とならぬよう、対象業務の範囲の明確化と厳格な運用が求められる」と主張した。
 経団連が「『労働時間をベースとする処遇』と、高度プロフェッショナ ル制度をはじめとする『労働時間をベースとしない処遇』の組み合わせを可能とする労働時間法制への見直しに向けた検討が求められる」と述べたことにも言及。「時間外労働の上限規制の徹底など、すべての職場における働き方改革の定着促進にこそ取り組むべきである」と訴えた。(連合作成プレスリリースを要約 1月18日)

 連合見解の焦点は賃上げ率である。経団連は連合の掲げる賃上げ目標に対して「2014 年以降の賃金引上げ結果と比べて大きく乖離している」「慎重な検討が望まれる」と述べたうえで、「デフレからの脱却と『人への投資』促進による構造的な賃金引上げを目指した企業行動への転換を実現する正念場」と主張した。
この見解について連合は「これまでの延長線上を超える思い切った経営判断が不可欠である」と違和感を示した。さらに「経済界のリーダーとして、社会性の視座から日本全体の賃金決定はいかにあるべきか、マクロ経済と整合性のある明確なメッセージを発信すべきである」「日本経済の中長期の成長を考えれば、将来の生活設計を左右する月例賃金の引き上げこそが重要である」と求めた。
 これは連合の所管外の問題だが、中小企業には販売先からの値下げ要求を受けて賃上げできないケースも少なくない。経団連は大手企業に対して、下請けや納入元の中小企業に値下げ要求をしないことを呼びかけてほしいものだ。個別取引の問題とはいえ、値下げ要求をしないという空気をつくり出さないと中小企業が圧迫されるだけである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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