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春闘賃上げ、民間予測の平均2.85% 物価上昇を上回れるか

物価の上昇で注目される今年の春闘での賃上げ率について、民間予測の平均が2・85%になった。予測通りになれば、1997年以来26年ぶりの高さとなる。しかし、足元では前年同月より4%近く物価が上昇しており、今年度の物価は前年から3%ほど上昇する見込み。政権が掲げる物価上昇を上回る賃上げの実現はハードルが高そうだ。
民間シンクタンクの日本経済研究センターが16日、エコノミスト33人の集計結果をまとめた。センターが調査を始めた2012年以降、賃上げ予測の集計は初めて。賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)の平均は1・08%、定期昇給(定昇)が1・78%だった。33人のうち最も高い賃上げ率の予測値は3・8%、最低は2・3%だった。  
厚生労働省のまとめによると、昨年の定昇を含む賃上げ率は2・2%。それに対して、21年度の消費者物価指数の上昇率は0・1%だった。22年度は政府の予測で3・0%に上がる。物価上昇を上回る賃上げにならないと、家計には実質マイナスとなる。(朝日新聞デジタル 1月16日)

経団連は春闘に臨む経営側の指針である「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」で、物価高騰の影響を考慮した賃金の引き上げを提言したが、連合の要求には疑問を呈した。連合は定期昇給を含めて5%程度の賃上げを要求しているが、経団連は、過去約10年の実績との乖離が大きいと指摘したうえで、「要求水準自体は慎重な検討が望まれる」と求めた。
ただ、経団連が対象にしているのはあくまで大企業の賃上げである。中小企業の状況はどうなっているのだろうか。
 東京新聞(1月18日付け)によると、城南信用金庫と東京新聞のアンケートに、中小企業の7割以上が「賃上げの予定なし」と答えた。理由は「収益が確保できず、逆に人件費を削減している」(品川区の印刷業)、「客の財布のひもは固い。もともと薄利で賃上げまで回らない」(調布市の和菓子製造・小売り)など。
ガソリンなど燃料代の高騰による利益率悪化も、賃上げを控える理由になりそうだ。相模原市の運輸業者は「価格転嫁で取引先の3割から発注がなくなった同業者もいる。慎重にならざるを得ない」と調査に答えている。
大企業と中小企業は別世界である。分かり切った現実だが、もっとクローズアップされたほうがよい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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