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活発化する「ジョブ型雇用」導入で個人に求められること

2023年は職務内容(ジョブ)に基づいて必要な人材を採用する「ジョブ型雇用」制度をめぐる動きが一段と活発化しそうだ。これまで日立製作所、富士通、資生堂などの大手企業が相次いでジョブ型雇用の導入方針を打ち出した。岸田文雄政権も6月をめどにジョブ型の職務給中心の給与体系への移行を促す企業向けの指針を策定する予定だ。普及・定着に向けた期待や課題を探った。
 ジョブ型雇用への関心の高まりは、「年功序列」と「終身雇用」を柱とする日本型雇用システムが限界にきていることが背景にある。年功賃金による人件費総額の上昇は企業にとって大きな負担となっている。
グローバル化の進展に伴いジョブ型が標準の働き方である海外拠点と日本型の仕組みに開きが出てきたことも大きい。グローバル化に対応した人事制度に改めないと海外の優秀な人材の獲得や定着が難しい。さらに新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークの増加もジョブ型雇用への関心の高まりを後押ししている。(ニュースイッチ 1月7日)

人件費に余裕があればメンバーシップ型のまま成果給にウエイトを置いた賃金体系に変更すればよいのだが、賃上げ圧力でこの体系の運用も厳しくなってゆく。おのずとジョブ型への移行が進む。
ただ、新卒採用ではジョブ型が一気に進むことは考えられない。
HR総研が実施した「2023年新卒採用でのジョブ型(職種別)採用の導入意向」では、「導入する」が19%だった。「導入する」は大企業が26%、中堅企業では21%、中小企業では13%。社員数が少なければ、どの部門に配属しても他部門の業務にも対応できる多能工として稼働させなければ組織が廻らない。
大企業も26%に過ぎないが、新卒社員の場合、何年か働かなければ適性は見えてこない。本人も明確なキャリアプランを描いていなければ、指向性が定まらないだろう。ジョブ型採用が少ないのは必然である。
しかし高額な賃金でAI人材が新卒で採用されるような流れが加速すれば、他の職種にもおよんでジョブ型の新卒採用が普及する。先行事例に反応して意外に早く普及するのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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