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ヘルパー「還暦でも若手」60歳以上4割弱

訪問介護を担うホームヘルパーの高齢化が進んでいる。2021年度の民間調査では4割弱を60歳以上が占めた。低賃金などを理由に若手が育たず、介護現場の人手不足が深刻だ。ベテランヘルパーの負担が増加しており、体力が必要な作業ではケガや事故のリスクも潜む。訪問介護事業者からは「このままでは事業が継続できない」と不安の声が上がる。
公益財団法人「介護労働安定センター」が全国の介護事業所に行った介護労働実態調査(21年度)によると、訪問看護員の平均年齢は54・4歳。60歳以上が37・6%を占め、11年度から約10ポイント上昇した。70歳以上も12・2%に上る。一方で30代は9・9%、30歳未満は3・8%にとどまった。
(中略)
 ヘルパー不足の要因の一つが報酬の低さだ。賃金構造基本統計調査によると「訪問介護従事者」の21年の所定内給与は月24万9900円。10年前から4万6600円増えたが、全産業の平均給与より5万7500円低い。若手が増えず、定年退職したシニア世代などが支える状況が続く。(日本経済新聞 1月6日)

ヘルパーに限らず介護職の高齢化が進んでいる。介護労働安定センターの令和3年度「介護労働実態調査」は介護職全体の年齢も取り上げている。
65 歳以上の労働者(有期職員、無期職員)が「いる」と回答した事業所は 68.0%(前年 72.6%)、「いない」は 30.6%(前年 26.2%)。勤務する職種別に 65 歳以上労働者数がいる事業所の割合は、「介護職員」に高齢者がいる事業所が最も高く45.2% であった。
職員の高齢化は戦力ダウンをもたらすだけではない。デジタル対応に乗り遅れてしまいかねない。その兆候は同調査にも現われている。
ICT機器の活用状況は、「パソコンで利用者情報(ケアプラン、介護記録等)を共有している」 が 52.8%(昨年 50.4%)、「記録から介護保険請求システムまで一括している」が 42.8%(同 39.1%)、「タブレット端末等で利用者情報(ケアプラン、介護記録等)を共有している」が 28.6%(同 22.0%)にすぎない 。
一方、「いずれも行っていない」は 22.0%(同 25.8%)だった。背景は職員の高齢化だけではないだろうが、職員の年齢層がもっと若ければ、こうした普及状況にはなるまい。
厚生労働省は医療と介護の連携に重点を置いているが、思うように進んでいない。原因のひとつは、介護事業者のデジタル対応が遅れていることにあるようだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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