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裁量労働、「専門型」で本人同意義務に 働き過ぎに配慮

あらかじめ決めた時間だけ働いたとみなす裁量労働制について、厚生労働省は弁護士など「専門型」の業務に労働者本人の同意を新たに義務づける。現在は事業の立案・調査といった「企画型」のみ同意が必要だが対象を広げる。企業の都合で過大な業務を与える懸念に対応する。M&A(合併・買収)などを念頭に専門型の対象も追加する方向だ。
20日に開いた労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会に提示した。2023年に政省令を改正し、24年に導入する。
専門型は弁護士や公認会計士、証券アナリストやゲーム用ソフト開発など19業種あり、省令や告示で定められている。企業内の導入には労使協定が必要だが、本人同意は求められていなかった。
裁量労働制は長時間労働による過労が懸念されている。厚労省は裁量労働制の対象者に対して健康・福祉面で配慮することも求める。前日の勤務終了から翌日の始業まで一定時間以上の休息を確保する「勤務間インターバル制度」や深夜勤務の回数制限などを盛り込む。(日本経済新聞 12月21日)

勤務間インターバル制度について、労働経済学が専門の高崎経済大学経済学部の小林徹准教授を取材させていただく機会があった。小林氏はこの制度の導入メリットに言及した。
「直接的なメリットは離職率の低下や生産性の向上だが、そこから派生する間接的なメリットもいくつか考えられる。たとえば採用コストの低下だ。離職者が出れば後任の人材を採用することが多いが、近年の求職者は、とくにこれから勤続年数を伸ばし年収を高めていく若手ほど離職率を非常に気にしている」
 さらに「離職率が高かったり開示されていなかったりすれば応募のパイは小さくなるが、離職率が低ければパイは大きくなって採用しやすくなる。これが間接的なメリットになると思う」と付け加えた。
 さらに導入事例として特別養護老人ホームあかつき苑(東京都江東区)の取り組みを挙げた。老人ホームには夜勤や日勤があるため、日によって勤務時間が異なる変形労働時間制を導入している。夜勤は職場にいる時間が長いので、1日単位のインターバルではなく、夜勤を終了したら24時間、日勤の場合は12時間のインターバルを設けている。導入した結果、離職率が下がったという。
 介護施設の業務は工場などと違い、定型化しにくいために勤務間インターバル制度の導入にはなじみにくいという見方もあるというが、先例を参考に導入を検討したらどうだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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