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技能実習、特定技能と統合も視野 有識者会議が初会合

政府は14日、技能実習と特定技能の両制度の改正を議論する有識者会議の初会合を開いた。技能実習は労働力の確保に使われているのが実態で、新興国への技術移転という当初の目的と乖離(かいり)する。両制度の統合も含め外国人受け入れの方向性を検討する。
有識者会議は両制度が抱える課題を洗い出し、適切な受け入れの体制を関係閣僚に提言する。2023年春に中間報告を出し、同年秋に最終報告をまとめる。
座長を務める国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長は会議で「安全安心、多様性、個人の尊厳と人権の尊重という共生社会の3つのビジョンを実現すべく検討したい」と述べた。委員には労使の代表者や地方自治体の首長、法曹関係者らが入った。
14日の会合では技能実習の目的と実態がかけ離れていることを挙げて「廃止すべきだ」との意見が出た。「実習生が帰国後に習得した技能を活用するなどで国際貢献になっていることもみて総合的に議論すべきだ」との主張もあった。(日本経済新聞 12月15日)

 特定技能が創設された2019年に、いずれ技能実習との統合に向かうのではないかと見られていた。それだけ技能実習制度に問題が多く、とくに実習という建前と人手不足を補う雇用という実態のかい離は拡大する一方だった。
 さらに米国国務省人身取引監視対策部が毎年発表する「人身取引報告書」で、技能実習制度の問題点が指摘され続けていることについて、どれだけ正面から受け止めてきたのだろうか。
「2022年人身取引報告書」も<技能実習制度の下に日本国内にいる移住労働者の強制労働の報告は、政府が報告書対象期間に特定した数よりも依然として多かった>と指摘したうえで、日本政府の対応を次のように批判した。
<技能実習制度において、政府と送り出し国との協力覚書は、借金を理由に技能実習生を強要する主な要因の一つである外国に拠点を持つ労働者募集機関による過剰な金銭徴収を防止する上で依然として効果を発揮しておらず、政府は同制度の下、募集を行う者と雇用主に対して、労働搾取目的の人身取引犯罪の責任を課す対策を全く講じなかった>
 技能実習生をめぐる不祥事が発生すると、不届きな実習実施先や管理団体の個別問題として扱われがちだが、制度に関わる構造的な問題であることを総括することが必要だ。「多文化共生社会をめざす」というアドバルーンで糊塗すれば、技能実習制度の闇を引きずったままになってしまう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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