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リスキリング「できていない」が半数超

人材サービス大手のエン・ジャパンが35歳以上を対象に実施した調査によると、約3割がリスキリングに取り組んでいると回答した。一方、半分以上は取り組んでいなかった。忙しくて学ぶ時間を確保できない点、費用負担の重さを理由に挙げる人が目立つ。

学ぶ意欲をどう引き出すか。2人の識者(注・田中研之輔法政大学教授、長瀬慶重サイバーエージェント専務執役員)に共通していたのは「なりたい自分をイメージする」ことだった。高い語学力やプログラミング技術を身に着けても、将来のキャリアに結びつかなければもったいない。

社員の成長は組織の競争力の源泉でもある。働く人一人ひとりが学ぶ意欲を持つのに加え、職場の側のサポートも求められる。働く人、職場とも長期的視点での取り組みが欠かせない。(日本経済新聞 12月8日)

 新しいビジネス用語が登場し、それが骨太方針など政府文書に新たな方向性を示す概念として書き込まれると、途端に流行語になってビジネスパースンに襲いかかる。実践しなければ乗り遅れて、ビジネス社会で弾かれてしまう。そんな強迫観念すら抱く人が普通になっていく。

 あるいはリスキリングもその一例かもしれない。スキルを棚卸して、今後求められながらも自分に不足しているスキルを身に着ける取り組みは、昭和の時代から求められていた。

いまになってリスキリングというキーワードが喧伝され出したのは、DX対応を中高年社員に求めることが背景にある。

 従来は50代に入れば給与がダウンしても、ともかく定年まで無難に過ごすことを最優先していた層は多かったが、いまや戦力にならないと黒字リストラの対象に指名されかねない。過去の実績は当人に思い出に過ぎず、若手社員と同様に成長が求められる。

 実際、エン・ジャパンの調査によると、50代以上でも55%がリスクリングの必要性を感じている。感じることが「ときどきある」も34%で、多かれ少なかれ、リスキリングが必要だと受け止めている。

 退職するまで成長が求められ、ひと息つく余裕は与えられない。ひと息つけるのは退職して以降である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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