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企業「インフレ手当」相次ぐ 三菱自、最大10万円支給

従業員の生活を下支えする「インフレ手当」(総合2面きょうのことば)を支給する企業が相次いでいる。三菱自動車は12月に一時金として最大10万円支給する。調査会社のオリコンも毎月の給与に特別手当の上乗せを始めた。物価上昇が続く中で、実質的な賃金の目減りを防ぐ狙いだ。
三菱自は「特別支援金」の名称で12月2日付で支給する。管理職を除く正社員など約1万2千人に10万円を一時金として支払う。約2千人の期間従業員やアルバイトなどには7万円を支給する。支給総額は13億円に上る見込みだ。賞与の増加などと合わせて正社員の組合員平均の年収は前年比1割増となる。
大手製造業ではこのほか、三菱ガス化学が最大6万円を今月支給した。管理職以外の正社員など約1900人が対象で、扶養する家族の人数に応じて支給額が変動した。日本特殊陶業も今月、本社と国内グループ14社で働く約9800人を対象に正社員に5万円、契約社員とパート社員に2万円を支給した。
 ビーフン製造大手のケンミン食品(神戸市)は夏に続き2度目の支給をする。(日本経済新聞 11月30日)

インフレ手当支給の口火を切ったのはサイボウズである、今年7月に「インフレ特別手当」として一時金の支給を発表した。支給額は月間労働時間で区分けされ、128時間超が15万円、96時間超が12万円、64時間超96時間以下が9万円、64時間以下が6万円。
その後、続々とインフレ手当を支給する企業が名乗り出て、いまやニュース価値がなくなるほど普及した。生活設計が落ち着かなくなれば仕事にも影響が出てしまう。それだけ必然性の高い手当なのだが、サイボウズの支給額は多い。
平均支給額は帝国データバンクの調査によると約5万2000円。各自治体が低所得世帯向けに生活保持のために支給した援助金が5万円なので、この水準に合わせたのだろうか。先行事例になったサイボウズには及ばなくとも、社員はひと息つける。
ただ、これに賃上げが加わって人件費増が続くと、業績の芳しくない会社はこの流れに対応できない。かりに人件費を下げたくとも、上昇圧力が働いている時勢にそうはいかない。
おのずと人員削減に踏み切らざるを得なくなる。かつては業績が悪化した場合、「皆で痛みを分かち合う」という方針で、賞与のカットなどでコストダウンを図って雇用を守る会社が多かったが、いまはリストラに不感症の時代だ。経営陣が雇用だけは死守したいと思っていても、銀行からリストラ要請を受ければ抗えない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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