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後継者不在率、初の 60%割れ、事業承継は「脱ファミリー」化が加速

日本政策金融公庫の調査では、60 歳以上の経営者のうち 50% 超が将来的な廃業を予定。このうち「後継者難」を理由とする廃業が約 3 割に迫る。 後継者が不在であるなか、新型コロナウイルスによる業績悪化などが追い打ちとなり事業継続 を断念する事例も想定され、その回避策としての事業承継支援が今まで以上に注目されている。
 2022 年の全国・全業種約 27 万社の後継者不在率は 57.2%となり、コロナ前の 2019 年か らは 8.0pt、21 年の不在率 61.5%からも 4.3pt 低下し、5 年連続で不在率が低下した。また、調査を開始した 11 年以降、後継者不在率は初めて 60%を下回った。2022 年の代表者の就任経緯では、買収や出向を中心にした「M&Aほか」の割合が 20.3% と、調査開始以降で初めて 2 割を超えた。具体的な後継候補では、最も高いのは「非同族」 の 36.1%で、前年を 2.9pt 上回った。2011 年の調査以降、後継者候補は「子供」の割合 が最も高い状態が続いてきたものの、初めて「非同族」が首位となった。(帝国データバンク作成リリースを要約 11月16日)

 後継者が不在ならば廃業するか、M&Aか、あるいは経営陣によるMBOか、従業員によるEBOか。選択肢はこの4つである。
国は中小企業の存続策としてM&A促進に取り組んでいるが、それはM&Aが普及していないからだ。なぜ進んでいないのか。いくつかの理由が挙げられるが、まずは経営者にM&Aの知識が乏しいこと。M&Aの対象になり得る会社でも、対象にならないと思い込んでいて、存続策の選択肢として視野に入れていない。
中小企業のサポーターである税理士や金融機関はM&Aの知識を一定程度有しているが、まだ積極的に経営者にM&Aを提案するには至っていないという。さらにM&A仲介業者の報酬額が中小企業にとって高額であることも、M&Aが普及しない一因かもしれない。
一方、M&A業者を取材すると買い手側の意欲は旺盛である。まさに需給ギャップが生じている。税理士と金融機関が中小企業経営者にM&Aの知識を提供し、経営者がM&A正しく理解すれば“身売り”というネガティブなイメージを払拭できる。従業員の雇用を守り、納入先と仕入先の取り引きを守るという積極的な選択肢として普及が進むはずだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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