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地方副業、鳥取が先行 「週1で副社長」300人集う

高度な職業スキルを持った人材が都市部などでの仕事を続けながら、移住を伴わずに地方企業で働く「地方副業」が広がってきた。働き手不足の解消だけでなく、新たな視点で事業を見つめ直すことで経営課題の解決につながる可能性がある。新型コロナウイルス禍でリモートワークが浸透したことも追い風に、鳥取県や富山県などが積極的に推進する。
地方副業は大企業などで働く技術者や管理職らが、地方の企業で自身の知見や経験を生かす仕組み。国は地方副業を人材不足を補う地方創生の重要な手段と位置付けており、各都道府県に首都圏の人材紹介会社と協力したマッチングを促してきた。
仲介する人材会社、みらいワークスとパーソルキャリアの大手2社のデータを2022年8月時点で集計したところ、副業解禁の18年以降の累計で全国の募集件数は2154社だった。
都道府県では鳥取県が293社で最も多く、大阪府(138社)、山口県(128社)、富山県(113社)が続いた。
鳥取県が元総務官僚の平井伸治知事の主導で、中小企業に副業の共同募集を呼びかける。副業を「プチ移住」と位置付け、19年に「とっとり副業・兼業プロジェクト『鳥取県で週1副社長』」と題したホームページを立ち上げた。(日本経済新聞 11月12日)

「とっとり副業・兼業プロジェクト」は産業振興にとっておもしろい取り組みだ。本業として雇用する場合、ミスマッチのリスクが付きものであるうえに、迎えられる人材も退職・移住というリスクを回避できる。
このプロジェクトで募集のあった案件は多岐にわたる。たとえば①創業100年大正より続く「まんじゅうや」での経営のアドバイス②自然と観光、ビジネスの新しい交流拠点へ米子港の『街づくり』に関する新規事業開発③因幡の名峰「鷲峰山」を眺める展望風呂。鹿野温泉 国民宿舎『山紫苑』への集客アドバイス④砂丘で栽培した葡萄を使う唯一無二のワイン!販路拡大・販売促進のサポート⑤山陰、山陽、関西を結ぶローカル線を運営する鉄道会社の人事評価制度設計――など。
副業人材とのマッチングが好循環に至れば、副業人材の在籍企業との協業も考えられ、それは関係人口の創出にもつながる。当然、鳥取県は想定しているだろう。
ところで、県が主導して副業人材の受け入れを進める最中に、県内に副業を禁止している企業もあるだろう。個々の企業の判断によるが、副業解禁ムードが強まるだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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