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「仕事が回らない」 厚労省が「キャリア官僚」募集 若手らの離職で

「若い人が辞めて仕事が回らない」――。若手・中堅職員の離職が相次ぐ厚生労働省が11日、独自に総合職(キャリア)相当の職員の中途採用に乗り出すと発表した。民間企業や官公庁などで7年以上の経験がある人が条件。5人程度を想定し、2023年4月の採用を予定する。
 募集するのは幹部候補の「キャリア官僚」と呼ばれる総合職相当の課長補佐級。30~40代が中心の役職で、省が独自に中途採用するのは初めてだという。12月8日まで応募を受け付け、論文試験や面接などで選考する。  
募集に踏み切る背景には、若手や中堅職員の離職がある。同省は離職者数を明らかにしていないが、幹部の一人は「この3年ぐらいで顕著になっている」。元々、長時間勤務が指摘される中で、コロナ禍も重なり、若手だけでなく「最近は40歳ぐらいまでの中堅も辞めていて、大変痛い。やらなければならない、いろんな仕事を犠牲にしている」(幹部)という。(朝日新聞デジタル 11月11日)

厚生労働省の中途採用に応募する民間人は就労環境を調べたうえで、実態を承知のうえで応募するのだろうか。
中央省庁で最も残業時間の多い厚労省では、職員が“強制労働省”と自虐しているそうだ。この過酷な労働環境を改善しようと、2019年に改革若手チームが緊急提言を発表した。
提言書には職員の生々しい肉声が掲載された。「厚生労働省に入省して、生きながら人生の墓場に入ったと ずっと思っている」(大臣官房、係長級職員)「毎日いつ辞めようかと考えている。 毎日終電を超えていた日は、毎日死にたいと思った」(保険局、係長級職員)「残業することが美学(残業していないのは暇な人)という認識があり、定時に帰りづらい」 (労働基準局、係員)。「ハラスメントを受けたことがある」も46%に上った。
この提言を受けて、改革若手チーム・民間チームは「2025年までに実現したい厚労省改革の内容」として、業務改革、職場改善、人事改革、広報改革の4分野で改革項目をまとめた。
人事改革では「人材配置の柔軟性向上」「採用ソースの拡大」「きめ細かい職員ケアの実施」「意欲につながるキャリアや経験値の提供」「人事戦略の策定」「トップ主導で戦略を実行」などが挙げられた。
だが若手チームによる提言なので、中堅以上の、とくにキャリア官僚の評価方法には踏み込んでいない。幹部職員の評価方法が改革されない限り省内は変わらないが、局長クラスの人事は官邸の意向を汲むという。
この実態も中途入省に応募する人は調査済みだろう。外様ゆえに出世は望まず、たぶん数年後には厚労省勤務という看板を活かして転職するシナリオを描く人もいるに違いない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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