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経団連の影響力占う試金石、「中途」改め経験者採用呼びかけへ

経団連は、新卒者ではない従業員の採用で一般的に使われている「中途採用」という言葉の使用をやめ、「経験者採用」に統一するよう会員企業に呼びかける方針を固めた。「中途」が与える消極的な印象を払拭(ふっしょく)し、円滑な労働移動を促して経済の活性化につなげる狙いがある。 2023年春闘の経営側の交渉方針などを示す「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)の素案に盛り込んだ。まず来年から経団連の会員企業向けの書類やアンケートなどで「経験者採用」の表記に統一する。会員企業にも採用活動などでの使用を推奨する。
 企業では、入社後の職務を明確にする「ジョブ型採用」など、採用方法が多様化している。経団連は、退職した元社員を採用する「カムバック採用」「アルムナイ採用」、社員から知人や友人を紹介してもらう「リファラル採用」などの活用も求める。
 ただ、経団連が提唱した呼称が一般に広がるかは未知数だ。00年代に入ってからは「春闘」の使用をやめ、「春季労使交渉」と呼んでいるが、使用は一部にとどまる。「経験者採用」が定着するかどうかは、経団連の影響力を占う試金石にもなる。(読売新聞オンライン 11月7日)

 中途という言葉は「中途退社」「中途で投げ出す」「中途半端」など物事を完遂できずにドロップアウトしてしまう場面を示す用法が多い。新卒入社と中途入社、新卒採用と中途採用。これらを対比すると、あくまで新卒が王道で、中途は補完的な手段というイメージが強い。
 実際、大手企業では長らく中途は補完的な手段だった。中途組は最初からマイノリティーで出世コースを外れ、本人も上昇志向を持たなかった。
中小ベンチャー企業も創業期は中途採用に頼って、次のステップで新卒採用と中途採用を併用し、株式上場が見えた時点で新卒採用にシフトする。ひと昔前までは、これが標準的な採用手段だった。
 しかし、すでに中途採用は補完ではなくなった。欠員補充もあるが、社内にないノウハウや知見を導入する目的での採用が増えたのだ。現にホームページの求人コーナーに「キャリア採用」とか「経験者採用」などと記載する企業は珍しくない。中途採用という言葉に違和感を持ったのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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