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日本電産、後継社長は社内昇格に方針転換

日本電産では、2022年4月21日には永守氏がCEOに復帰し、それから半年もたたない同年9月2日には、社長兼COO(最高執行責任者)だった関潤氏が辞任、新社長に創業メンバーの1人である小部博志副会長が暫定的に就任するなど、経営陣の交代劇が続いている。決算説明会の質疑応答では、永守氏がこの2年半を振り返り「地獄のようだった」と心境を吐露する場面もあった。  
「OEMメーカーとは違い、部品メーカーは顧客が第一。(退任した関氏に)もっと顧客を回ってほしい、工場にも行ってほしいと伝えたが、そうしてはくれなかった。つらい2年半だったが、いい経験もしたと思っている。自分が自信を持って育成してきた社員が、考え方をしっかり持って仕事をしてくれている」(同氏)
 さらに、後継者問題(後継者探し)については「10年遅れた」と言及。「(後継者を)外部に求めたのは、会社を経営してきた50年間で最大のミスだった。今後は内部の人材を中心に経営を行っている。既報の通り、2023年4月には新しい経営体制を敷く。既に人材も決めている」と続けた。(EE Times Japan 10月25日)

 いまや日本電産は事業承継の恰好のケーススタディになってしまった。CEO永守重信氏が記者会見という公の場で、これまでスカウトしてきた後任社長たちを批判するのはどんな動機からなのか。普通は口にしない。
 この間の後継人事を振り返ると、カリスマ創業者の後任に落下傘人事は難しいことがよく理解できる。創業者にとって後事を託すには自分と同等の手腕でなければならないのだが、それはあり得ない。誰が後任に就任しても役不足で、身体が持つ限り“終身経営者”へと向かわざるを得なくなる。あるいは、事業承継がリスク要因であることを把握していても、終身経営者を望んでいるのかもしれない。
 事業承継問題は事業承継をサポートする側の会計業界でも顕在化している。税理士の高齢化が進んでいるのだ。
日本税理士連合会が10年ごとに実施する税理士実態調査の直近は、2014年の第6回調査(対象3万2747人)だが、この調査で税理士の年齢分布を見ると、60代30・1%、70代13・3%、80代10・4%で、60代以上が53・8%だった。
04年に実施した第5回調査で、すでに60歳以上は52・9%と税理士の半数以上が還暦を超えていが、それから8年間で0・8ポイント拡大した。第6回調査結果について、日本税理士連合会は「高齢化が進んでいるとともに、 関与先も代替わりなどで若い経営者が増えているため、若手の税理士の活躍が期待されています」と暗に事業承継を促している。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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