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「日本の外国人技能実習生の人権取り組みは不十分」米国務省報告書が厳しい評価

米国務省は7月19日、世界188カ国・地域の人身売買報告書を公表し、日本の「外国人技能実習生制度」について「人権問題への取り組みが不十分」と指摘した。G7のうち、米、英、カナダ、ドイツ、フランスは人権対策が最も進んでいる「第1グループ」に入ったが、日本とイタリアはその下の「第2グループ」に分類された。
(中略)
日本に関する報告書要旨は次の通り。
1.日本政府は、人身売買撲滅のための最低基準を完全には満たしていないが、そうするために多大な努力を払っており、日本は引き続き3年連続で第2グループに留まった。
2.あらゆる形態の人身売買に対処し、人身売買の被害者を特定して保護するという政治的意思が継続的に欠如している。
3.政府は、4人の技能実習制度(TITP)参加者を人身売買の犠牲者として初めて公式に認めた。
(中略)
9.労働者の一部は、移動とコミュニケーションの自由の制限、パスポートやその他の個人的および法的文書の没収、国外追放または家族への危害の脅威、身体的暴力、劣悪な生活条件、賃金滞納等を経験している。
10.2021年には、7,167人のTITP参加者が職を失い、その一部は搾取的または虐待的な状況のために逃亡した可能性がある。(オルタナ 7月25日)

相変わらず技能実習制度は、国内外で評判が悪い。古川禎久法務大臣は今年1月7日、法務省で述べた年頭所感で「技能実習制度には、本音と建前のいびつな使い分けがあるとの意見・指摘にも正面から向き合わなければならない。果敢に見直しを進める。大切なのは改めるべきは改めるという誠実さだ」と決意を示した。
 4月25日には日本弁護士連合会が「技能実習制度の廃止と特定技能制度の改革に関する意見書」を内閣総理大臣、法務大臣、出入国在留管理庁長官、厚生労働大臣、経済産業大臣、外務大臣、国土交通大臣、農林水産大臣、総務大臣、文部科学大臣、衆参両院議長宛てに提出した。
 この意見書には「.技能実習制度を直ちに廃止する」に加えて「特定技能制度を以下の条件を満たす制度に改革する」として、次の項目が盛り込まれた。
①特定技能1号と2号を一本化して、特定技能制度により、現在は技能実習生として受け入れている技能レベルの非熟練分野の外国人労働者の受入れを開始し、在留期間更新を可能とする制度を導入して定住化を進める②特定技能で受け入れた当初から、家族帯同の可能性を認めた上で、永住審査の要件である就労資格をもった在留の期間に含める③転職の実効性を確保する④ブローカーによる労働者からの中間搾取を禁止することを前提とする。
技能実習制度が特定技能に集約される流れが既定路線になりつつある。技能実習制度が続く限り、米国務省の人身売買報告書の評価も抜本的に変わらないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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