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東京エレクトロン、賞与上積み 300万円超で人材流出防ぐ

半導体製造装置大手の東京エレクトロンは夏の賞与を平均30万円上積みする。国内外の一般社員が対象。好調な業績が続き既に支給した夏の賞与は国内トップクラスで、上積みを加えた合計の支給額は300万円を超える水準となる。半導体業界は世界的に人材の争奪戦となっている。待遇の向上で社員の流出を防ぎ優秀な人材の獲得も狙う。
国内外の工場や営業拠点などで勤務するグループ全体の一般社員約1万3000人に上積みとして特別賞与を7月下旬に支払う。管理職や経営陣などには中期業績に連動する株式報酬制度に基づいて8月に株式を交付する。
背景にあるのは世界的な半導体人材の獲得競争だ。装置大手ではオランダのASML(2021年に12万ユーロ=約1600万円)などが高い給与水準を提示。半導体メーカーも、21年の好業績で韓国のサムスン電子が月給5カ月分の特別賞与を支給している。(日本経済新聞 7月23日)

公開データによると、東京エレクトロンの平均年収は1285万円(44.0歳)。高水準である。公務員や会社員の平均年収情報サイト「平均年収.JP」で確認すると、44歳の平均年収は450万円~510万円、都道府県で最も高い東京都で672万円。
東京エレクトロンの平均年収は全国平均の約2.5倍、東京都平均の約2倍である。だが、先進諸国と比べても高水準なのかどうか。
日本の賃金が先進諸国よりも低いことは広く知られるようになった。経済協力開発機構(OECD)が公表した2020年の「世界の平均賃金データ」で、調査対象の35カ国のなかで1位はアメリカだった。2位がアイスランド、3位がルクセンブルクで、日本は韓国の19位よりも低く22位だった。
日本の順位は主要7カ国では下から2番目だったので、低賃金国といっても差し支えない。日本企業が人件費対策でアセアン各国に生産拠点を移転する歴史がつづいてきたが、賃金水準の上がった海外企業が日本の低賃金に利点を求め、さらに高品質の大量生産技術にも着目して日本に生産拠点を移して、日本が”世界の工場“に転化する日もそう遠くはないのでないのか。現にその兆しはある。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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