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成長戦略、高島宏平氏「高度人材の解雇規制緩和を」

グローバル化するなかで日本は独自ルールにこだわり過ぎている。変えるべきは人材移動に関わるルールで、規制が産業の活性化を阻んでいる。
高度人材を対象に解雇規制を緩めてはどうか。米国には年収3千万円のエンジニアがいる。米企業は雇ってもダメなら解雇するとの発想で積極採用するが、日本はそうはいかない。優秀な人材は報酬の高い海外に流れてしまう。
リスキリング(学び直し)と人材移動はセットで考える必要がある。米国ではリスキリングの費用を転職後に後払いする仕組みがある。無償でプログラミングを学んでIT(情報技術)企業に就職後、給料の一部を授業料として学校に支払う。
大企業がスタートアップを買収しやすくする視点も欠かせない。米スタートアップの出口戦略は9割がM&A(合併・買収)で、新規株式公開(IPO)は1割にすぎない。
日本はM&Aが少なく、上場を前提にしたビジネスしか始められない。自分たちで完結できる技術に向かいがちで、産業が活性化しない。
(日本経済新聞 7月6日)

 この記事はオイシックス・ラ・大地社長の高島宏平氏の見解である。かねてから雇用政策の課題として議論されつづけている流動化への危機感が現われている。
 人材流動化についてはさまざまな提言が示されている。さる7月7日、三菱総合研究所が開いたメディア懇談会で、キャリアシフトを促す「FLAPサイクル」形成を提言した。FはFind(知る)、LはLearn(学ぶ)、AはAct(行動する)、PはPerform(活躍する)。
 Fでは、経営層が企業理念を明確化し、必要な人的資本を可視化して、企業が求める人的資本を内外に発信する。Lでは、地域や産業ごとに個社を超えたリスキングと人材移動を促す地域の座組みを形成する。Aでは、成長領域への人材移動を後押しする「カスケード型(段階的な移行)の積極的労働政策」に転換する。Pでは、創造的な人材を評価する職務連動型の処遇体系を構築する。
 このFLAPをサイクルとして廻すという施策で、人材移動を推進すれば地域起点で産業の活性化を促せる三菱総研は提言した。問題は対象人材となる当人が移動を望むかどうか。政策の仕組みに実効性があっても、当人が他業種・他職種への移動を望まなければ有効に機能しない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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