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社長の再任案、総会1時間前に異例の撤回

エレベーター大手のフジテックは23日、この日の定時株主総会に提案予定だった創業家出身の内山高一社長の取締役選任議案を撤回したと発表した。大株主の香港系投資ファンド「オアシス・マネジメント」が、フジテックと創業家との間に不明朗な取引があるなどとして、再任反対を呼びかけていた。同日付で内山氏は代表権のない会長に退き、岡田隆夫副社長が社長に昇格する人事を決めた。  フジテックがこの日、内山社長の再任議案取り下げを発表したのは、総会が始まるわずか1時間前だった。上場企業の社長再任案が、総会直前に撤回される極めて異例の展開となった。  関係者によると、取り下げは前日夜に開いた取締役会で決まったという。  フジテック株主の4割は、ガバナンス(企業統治)への視線が厳しいとされる外国人投資家が占め、ファンドなどの機関投資家も多い。内山社長には、創業家に対する便宜供与など7項目の権限乱用があると追及するファンド側に対し、「法的にも、企業統治上も問題ない」とする会社側の主張への株主の賛同が広がらなかったためとみられる。(読売新聞オンライン 6月23日)

日本取引所グループのコーポレートガバナンス・コードに次のように明記している。 「上場会社がその役員や主要株主等との取引(関連当事者間の取引)を行う場合には、そうした取引が会社や株主共同の利益を害することのないよう、また、そうした懸念を惹起することのないよう、取締役会は、あらかじめ、取引の重要性やその性質に応じた適切な手続を定めてその枠組みを開示するとともに、その手続を踏まえた監視(取引の承認を含む)を行うべきである」  フジテックはこの規定に抵触していると疑問視されたのだ。“物言う株主”は経営に関与するわけでなく、株主利益を求めて文字通り“物言う”だけだが、不透明な経営実態にメスを入れるにはありがたい存在だ。  同様に議決権行使助言業者も影響力を増している。最大手の ISS(Institutional Shareholder Services Inc.)は、日本の上場会社の議決権行使助言方針について①監査役設置会社に対して取締役の 3 分の 1 以上を社外取締役にすることを求める②政策保有株式を過度に保有する会社の経営トップの取締役選任議案に反対を推奨する③取締役会に女性取締役がいない会社の経営トップの取締役選任議案に反対を推奨する――などを示している。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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