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取締役スキル開示3倍

3月期決算企業の株主総会が今週本格化する。コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)改定を受け、プライム上場企業の招集通知では取締役の能力を一覧にする「スキルマトリックス」を開示する企業は前年の3倍になり、英文方式の提供は5割増えた。取締役の選任や構成が適切かどうかをみる手掛かりになるなど、投資家の判断に役立ちそうだ。なれ合いの人選などはしづらくなる可能性もある。
三井住友信託銀行によると、5月末までに招集通知を公表した、プライム市場上場の企業644社のうち、92%にあたる591社がスキルマトリックスを掲載した。このうち21年も掲載していた企業は196社で、1年で3倍に増えた。今年は新たにオービックやベネフィット・ワンなどが記載した。
スキルマトリックスは「経営」や「財務」など取締役の知識や経験を一覧にしたものだ。株主が取締役の適性や取締役会のバランスを把握し、評価しやすくなる。(日本経済新聞 6月15日)

スキルマトリックスは今風にいえば「スキルの見える化」だが、多くの場合、当人の経験してきた業務分野にマルが記入されている。実績を築いたという根拠がスキルマトリックスで一目瞭然となるが、あくまで過去の成績表に近く、投資家が期待するポテンシャルは対象外だ。
取締役就任時がスキルのピークで、その後伸びなければ期待通りの成果を発揮できないだろうが、そこまでは誰しも見通せない。だからキャリアの成績表として、スキルマトリックスは取締役候補者を評価する有力なツールになっている。
社外取締役では、大学教授やタレントやアナウンサーなど企業実務に縁のない人物も起用されているが、スキルマトリックスにはどんな項目にマルが記入されるのか。株主総会で突かれたら、どう説明するのか。
収益向上への貢献を説明するには根拠がないので、たとえば幅広い知見とか、SDGs推進のインフルエンサー能力などを挙げるのかもしれない。物言う株主が大目に見てくれればよいのだが――。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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