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転勤制度いつまで?共働き時代に合わず、必要性の吟味不可欠

社員に希望しない転勤を求める雇用慣行の見直しが進まない。共働きが増え、介護など事情を抱える社員もおり、時代にそぐわなくなりつつある。新型コロナウイルス禍でのリモートワーク普及を追い風に脱転勤に動く企業もある。人生設計やキャリアを優先し転職も当たり前の時代。必要性を吟味しなければ、社員の心は離れていく。 「結婚や子どもなど今後の人生を考えたら転勤は悩みの種だった」。東京都内のIT(情報技術)企業で働く30代男性は昨年、大手メーカーからの転職を決意した。今働く会社は原則、転勤がない。  実際に転勤する人はどの程度いるのか。リクルートワークス研究所の推計では毎年60万~70万人程度で横ばいが続いている。日本の労働人口(約6900万人)の1%が会社の指示で勤務地を変えている。アート引越センターによると、コロナ禍で一時落ち込んだ転勤に伴う引っ越しはコロナ前の水準に戻りつつあるという。  人材サービス大手エン・ジャパンの2019年の調査では6割超が「転勤が退職にきっかけになる」と回答した。(日本経済新聞 6月14日)

転勤を経験すれば地方のマーケットや商慣習を知り、その経験は本社勤務にも役立つが、転勤は家族に負荷を強いる。とくに子どもが何度も転校を余儀なくされることには「可哀そうなことをしてしまった」と負い目を感じてしまうようだ。  そのために単身赴任を選ぶと、今度は生活費が大きな負荷としてのしかかってくる。総務省の「家計調査報告・家計収支編」(2020年)によると、単身世帯(平均年齢58.5歳)の消費支出は,1世帯当たり1か月平均15万506円で,前年に比べ名目,・実質ともに8.1%の減少と, 3年連続の減少となった。それでも結構な金額で、月数万円程度の手当が支給されても持ち出しになって、賞与でカバーしているのかもしれない。  2020年に実施された「Yahoo!ニュース」の意識調査(投票2万1688人)では、転勤が「必要ではない」が63.8%、「必要」が36.2%だった。「必要ではない」とする意見には「家庭を持っているならその家族までもが巻き添えになる。家庭をかえりみず出世したいか、大切な家族をとるかの選択では?」という突き詰めたコメントもあった。  転勤受け入れが出世の道というキャリアの見做しが迫られている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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