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すかいらーく、5分未満の切り捨て賃金支払いへ パートらに16億円

外食大手のすかいらーくホールディングスが、パートやアルバイトの賃金の支払いを5分単位から1分単位に変えることが分かった。同社によると、これまで5分未満の労働時間は切り捨ててきたが、その分の賃金を過去2年分支払うという。対象は約9万人で、費用は計16億~17億円を見込んでいる。
同社は取材に対し、「5分単位の勤怠管理自体が違法である認識はない」と回答。7月から1分単位の支払いに切り替えるうえで、「円滑な移行及び従業員への配慮の観点から」これまで切り捨てていた分を支払うとした。  
同社はファミリーレストラン「ガスト」「バーミヤン」などを全国で約3100店舗展開している。  
この問題をめぐっては、同社のアルバイトの男性が「全国一般東京東部労働組合」に加入し、切り捨てていた分の賃金を全従業員に支払うよう、団体交渉で同社に求めてきた。  労働基準法は「賃金は全額を支払わなければならない」と定めている。厚生労働省の担当者は「端数の時間を切り捨てることは認められない。その分の賃金が支払われなければ違法となる可能性がある」と話す。
(朝日新聞デジタル 6月8日)

東京都労働基準局は『しっかりマスター労働基準法』と題する冊子で労働時間の単位についてQ&Aで説明している。
「タイムカードを使い、1分単位で労働時間の記録を行っていますが、毎日の勤務時間を1分単位で記録するのは大変なので、15分未満切り捨て、15分以上30分を切り上げたいのですが?」という質問に対して、以下の回答を述べている。
「1日の労働時間の集計に当たり、端数を切り上げることは問題ありませんが、切り捨てることはできません。ただし、1か月の労働時間を通算して30分未満の端数が出た場合は切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げて計算することは認められています」
 すかいらーくホールディングスがこのルールを知らなかったのかどうか。真相はともかく、同様の企業はかなり多いのではないのか。
中小企業にはみなし残業手当すら支払わず、その代わり残業をしないように指示する一方で、業務量は従来通りという例も多い。規定時間内に業務が終了しないのは生産性が低いからだと論理をすり替えて、正当性を保持している腹積もりなのだが、そんな企業では転職先の見つかった社員からポツリポツリと抜けていく。
一向に低空飛行から抜け出せず、やがて先細りになっていくが、経営者はその兆候に気づかないことが多い。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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