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「着替え」「朝礼」「居残り」は労働時間? 弁護士の見解は?

着替える時間などは「労働時間」に含まれるのでしょうか。グラディアトル法律事務所の若林翔弁護士に聞きました。 「これらの時間が労働時間に該当するかどうかは、これらの時間が使用者の指揮監督の下、業務として行われているかどうかによります。制服着用が義務付けられているような会社では当然、着替え時間も労働時間ということになるでしょうし、多くの朝礼も業務の一環として行われているでしょうから、これらの時間は賃金の発生する労働時間ということになります。 一方で、用もないのに友人と私語をするために居残っているような場合、使用者の指揮監督下にあるとは言えないので、労働時間には該当しないでしょう。使用者には従業員の労働時間を適切に把握し、賃金を支払うことはもちろん、働き過ぎによる健康被害の発生を防止する義務があるので、労働時間とそうでない時間をはっきりと区別し、労働時間をきちんと把握できるようにタイムカードなどの管理を徹底すべきだと言えます」(オトナンサー 5月11日)

どこまでを業務とみなすのか。業務の準備や後片付けに充当する時間は付加価値を生まないので、業務時間として認めない――これが会社側の言い分だろうが、準備も後片付けも社員にとってはプライベートな時間ではない。 あくまで業務に付随する時間で、しかも職場内で会社の監督のもとに作業を行なっているのだから業務時間である。そう社員は認識するものだ。 研修を業務外とみなす企業も、いまだに少なくない。とくに中小企業には経営者が「研修は自己研鑽であり業務ではないので時間外手当は支給しない」と明言する例が後を絶たないが、では研修は自由参加なのかといえば、けっしてそうではない。参加が義務付けられ、正当な理由がなく欠席すれば、人事評価にも反映される。 こうしたギャップは経営者が人件費の抑制を最優先しているのではなく、付加価値を創出する時間しか業務と認めないという依怙地な精神のあり方に由来する。 厚生労働省が通達を出して、業務、後片付け、研修なども業務時間に含まれ、賃金にカウントされることを周知徹底させることが必須ではないのか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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