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雇用市場 日本の回復遅れ 成長産業へ人材流れず

先進国の間で労働市場の回復度の差が鮮明だ。求人数は米国や英国で新型コロナウイルス流行前の1.6倍超に膨らみ、ドイツも1.2倍に達した。急ピッチの経済再開で人手が追いつかず、賃金上昇でインフレも加速する。日本の求人は依然としてコロナ前を下回る。助成金で失業率の悪化を抑える危機対応策で雇用の安定を図った分、持ち直しの勢いを欠く。
企業はポストの空席や人員不足などがある場合、広告や職業安定所への登録などで求人活動に動く。求人数は国による定義の違いがあっても、労働市場のトレンドを映す分かりやすい指標という点では共通する。
(中略)
 日本は戻りが鈍い。ハローワークに寄せられた求人数は2月時点でコロナ前より10%少ない。小売業や飲食店、医療・福祉の新規求人が回復していない。賃金も1%低下しており物価上昇圧力も米欧ほどには高まらない。
 充足されていない求人の多さを示す「欠員率」をみると、米国は2月に7・0%に達し、失業率(3・8%)を大きく上回る。日本は2・8%と比較的低水準で、失業率(2・7%)との差も小さい。
(日本経済新聞 4月15日)

この記事に「医療・福祉の新規求人が回復していない」とあるが、介護現場の人手不足は、コロナ禍で利用者が減ってもなおつづいている。一向に改善の見通しが立たないなかで、今年4月に発足した社会福祉連携推進法人制度に光明を見出せるのかどうか。
社会福祉連携推進法人制度は、複数の社会福祉法人が集まって上部団体として連携法人を設立し、採用や教育、物品購入などを一本化して弱点を補い合えることが連携推進法人に参加する利点である。
 とくに期待されているのが介護職の採用だ。あの手この手を尽くしてきたが、もはやお手上げ状態なので、複数の法人が連携すれば採用力を強化できると期待されている。もちろん各法人が単独で採用活動を実施しようが、合同で実施しようが、介護業界という枠から脱出できるわけではない。応募者から見れば、単独と合同の差異はほとんどないのではないだろうか。
 だが、外国人技能実習生の受け入れで連携推進法人は役に立つ。連携推進法人は一般社団法人として設立されるので、非営利が要件である技能実習生の監理団体に登録できる。連携推進法人が監理団体として、傘下の社会福祉法人に実習生を紹介し、毎月2~5万円の管理費を受け取れば、管理費を運営費としてプールできる。
これだけでもメリットが大きい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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