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JR北海道、年200人が中途退職 21年度見通し 若手中心、流出深刻

JR北海道で、2021年度の中途退職者(自己都合)が年間約200人と過去最多を更新する見通しであることが分かった。大半が10~30代の正社員で、19人だった11年度の10倍に膨らんでいる。新卒採用(21年春で250人)の約8割に相当し、人材流出は深刻だ。業績不振による給与の安さや将来不安のほか、町村部での勤務が敬遠される傾向が強いためだ。  
解雇など会社都合を除いた中途退職者は12年度から10年連続で増加。本年度は11日までに20年度実績(183人)を上回る退職の申し出があり、最終的に190人台になる可能性がある。  
人材流出が特に深刻なのが、線路を管理する保線などの現場担当者。冬季の除雪を含めて鉄道の安全運行に欠かせないが、町村部の配属となることも多い。JR幹部は「入社後の配属は選べないと念押ししても、希望と違う地方の保線担当となって退職するケースが後を絶たない」という。
(北海道新聞 3月12日)

中途退職問題に対して、JR北海道はまず給与水準の改善に取り組む。この記事が出た6日後の3月18日付け読売新聞によると、JR北海道の労使が2022年春闘で、月額500円のベアを実施することで妥結し、21年ぶりにベアが実施される。
JR北海道は赤字がつづいているが、離職防止策としてベアに踏み切ったようだ。読売新聞は<JR北では、若手社員の大量離職が問題となっている。経営の先行きへの不安に加え、同業他社や地元自治体に比べ低い給与水準が理由の一つとみられており、賃上げで離職を減らしたい狙いがあるとみられる>と書いている。
今春は結構な賃上げに踏み切る企業が多いので、JR北海道がベアを見送れば、中途退職者がさらに増えかねないと想定するのは当然だろうが、退職理由はむしろ配属先にあるのではないだろうか。
JR幹部は「入社後の配属は選べないと念押ししても、希望と違う地方の保線担当となって退職するケースが後を絶たない」とコメントしている。この実態がつづく以上、配属先を選べるように組織を再編する以外にないが、公共インフラの運営事業では、そうはいかないのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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