Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

役員報酬、米の半分以下

日本企業の役員報酬の海外との差が開いている。2021年の標準的な役員の報酬(中央値)は2493万円と、米国の5割以下にとどまった。特に株式による報酬によって差が開いている。日本でも住友林業やヤマハ発動機が業績に応じて自社株を付与する制度にするなど、経営人材を確保するための仕組み作りを急いでいる。
人事コンサルティングのマーサージャパン(東京・港)によると、日本の標準的な役員の報酬は2493万円だった。米国(5310万円)の半分以下で、英国(4175万円)やドイツ(3829万円)よりも低い。
差を生んでいるのは株式報酬だ。日本は基本給が全体の75%を占め、株式報酬は1%にとどまる。欧米は株式報酬の比率が1割を超える。
自社株を報酬の一部とする株式報酬は「業績向上へのインセンティブが働き、株主と同じ目線で経営にあたれる」(大和総研の藤野大輝研究員)ことから、欧米で普及している。
(日本経済新聞 2月19日)

日本総合研究所リサーチは、は2019年4月1日~20年3月31日を対象期間として提出された有価証券報告書から東証一部・東証二部上場企業2600社の役員報酬を算出した。
社内取締役 の平均年俸は3630万円(基本報酬2660万円、賞与640万円、株式報酬260万円、その他70万円)、社外役員の基本報酬水準は640万円。
社内取締役の報酬構成比率は①基本報酬73.3%、②賞与 17.6%、③株式報酬 7.2%、④退職慰労金1.8%、⑤その他報酬0.2%だった。
株式報酬7.2%はマーサージャパン調査の1%を上回っているが、それでも欧米に比べれば低い。株式報酬の比率を高めれば確かに株主と同じ目線で経営に従事できるが、同時に社員の給与にも株式報酬の比率を高めれば、企業家マインドが培われて、人材の底上げにつながるのではないだろうか。
上場企業の社員平均年収は東京商工リサーチの調査(2020年4月期~21年3月期)によると603万2000円だった。株式報酬次第で平均年収が1000万円を超えれば、おそらく目線は変わってくる。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。