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昨年の実質賃金、横ばい 名目賃金上昇も物価高で帳消し

厚生労働省は8日、働き手の賃金の動きを調べる毎月勤労統計の2021年分(速報値)を発表した。名目賃金にあたる労働者1人あたりの平均現金給与総額は前年より0・3%増の月額31万9528円だった。一方、名目賃金から物価変動の影響を除いた賃金の動きを示す実質賃金指数は前年と横ばいで、賃金の伸びを物価上昇が帳消しにした形だ。   
コロナ禍の影響が大きかった20年からの反動で、基本給など前年比プラスの指標がほとんどだが、ボーナスなどにあたる「特別に支払われた給与」は、夏の賞与が低調だったため前年比0・7%減の5万5767円だった。  
パートタイム労働者の残業代などの「所定外給与」は同6・7%減の2495円で、コロナ禍で仕事が減っている状況が続く。政府の自粛要請による影響を受けやすい飲食・宿泊は同26・7%減と減少率が大きかった。
(朝日新聞デジタル 2月8日)

帝国データバンクが2021年11月12日~15日に実施した調査(有効回答企業数1651社)によると、22年度の賃金について「税制優遇幅に関わらず賃上げを行う」と回答した企業は48.6%。税制優遇が大きければ79.4%の企業が賃上げに前向きな一方で、8.1%は「税制優遇幅に関わらず賃上げできない」と回答した。
「税制優遇幅に関わらず賃上げを行う」と回答した企業は、大企業が53.6%、中小企業が47.9%、小規模企業は37.6%。さらに小規模企業では「賃上げできない」と考えている企業が13.5%だった。
 賃上げ検討の背景は人材確保だけでなく、入札優遇策も影響しているだろう。国土交通省は、大企業は3%、中小企業は1.5%の賃上げを表明すれば、総合評価落札方式の入札で加点を受けられる制度を発表した。
賃上げできない企業の社員にとって、物価高は実質的に賃下げに転じてしまう。社員の流出も心配である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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