Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

課長、出向・副業が前提 三井住友海上

三井住友海上火災保険は出向や社外での副業など「外部での経験」を社員が課長に昇進するための前提にする。大手企業で管理職の昇進に外部経験を課すのは珍しい。出向などで得た知見や人脈を社内で生かし、新たな事業の開発を促す。損害保険は主力の火災や自動車保険の成長が頭打ちになっており、多彩な人材の育成や外部との連携強化が課題になっていた。
外部の企業や官公庁に出向する機会を確保した上で、2030年度にも始める。製造業や保険でのつながりが深い自動車販売店、官公庁、ベンチャー企業などへの出向を想定している。21年に解禁した副業も奨励する。すでに休日や終業後に特許事務所や顧客対応関連の仕事に就く例が出ている。
三井住友海上の部課長は約3900人おり、中途採用者を含めて2割が外部経験を持つ。まず次期中期経営計画の25年度までに同比率を3割以上に高める。
(日本経済新聞 1月23日)

出向先での実績を幹部昇格の判断材料にする例は多い。出向先で経営経験を積ませ、経営人材としての資質を評価するのだが、明暗が分かれやすい。
誰しも出向先で格別の成果を上げるべく全力を傾注するが、例えば出向先が後継者不在で買収した企業の場合、その企業固有の組織風土がある。出向者が人間関係を築く前にビシビシと働くと総スカンを食らいかねないが、その轍を踏んでしまう例が意外にも多いという。
M&Aコンサルタントが実態を説明してくれた。
「社長として出向する人は経営幹部をめざしているので、張り切り過ぎてしまう。それまでの仕事の仕方を全面否定して、自分のやり方を周知徹底させようとするのだが、人間関係を築かないと孤立してしまう。挙句の果てに役員が全員辞表を出した事例もあった」
 だが、出向先の流儀に合わせていたら成果を出せるかどうか。
「出向先で成果を出せる人は、マネジメントスキルがすぐれているだけではなく、人間力もある。出向先には古株の幹部もいるかもしれないが、人間力がないと社内を掌握できない」
外部経験はひと皮むけるチャンスである。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。