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労働生産性の改善急務に 食料品、製造業平均の5割

経済産業省の2019年の工業統計調査によると、食料品製造業の従業員数は114万人と製造業で最も多く、製造業全体の15%を占める。製造品出荷額も29兆円超で、輸送用機械器具製造業(70兆円)などに次ぐ規模となっている。
一方、18年度の企業活動基本調査をみると、食料品製造業の労働生産性は654万円となっており製造業平均(1170万円)の5割強にとどまる。食品メーカーは中小企業が多く導入コストの高いロボットによる自動化などが進んでいない。
厚生労働省によると、求人してもどのくらい必要数に足りないかを示す欠員率は「食料品、飲料・たばこ・飼料製造業」が2・1%と全製造業の(1・7%)より高く、人手不足感は強い。いかに安いコストで自動化を進め、生産性を上げられるかが長年の課題となっている。
(日本経済新聞 3月18日)

生産性向上の考え方は業種によって相違がある。
厚生労働省が3月12日に開いた「介護分野における生産性向上フォーラム」で、田中滋埼玉県立大学理事長は、製造業の生産性と医療介護サービスの生産性の相違を指摘した。
「自動車製造業の生産性は従事者1人当たり生産台数で、少ない人数で多くの台数を作ることが生産性向上だが、医療介護では、少人数で多くの患者・利用者を看ることが生産性向上ではない」
 医療介護で問われるのはあくまで診療やケアの質の向上で、多職種連携が重視されるように、少人数で診療やケアに当たることは求められていない。
田中氏の集計によると、日本の介護職員1人当たりの要介護・要支援者数は2000年に4.0人、19年に3.4人だった。19年の間に低下しているが、田中氏はこう説明した。
「これを介護の生産性低下と非難してはいけない。介護技術の向上やサービスの拡大などが背景にある。介護の生産性向上は、お客様がより安心・安全が介護を受け、働く人がより安心・安全な介護ができることが目的」と述べた。
 その上で「広義の生産性向上」として①時間の余裕・心の余裕②仕事の楽しさ・前向き③業務改善からイノベーションの期待④新たな価値を創る――を挙げた。数値化は難しいのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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