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再雇用後の“やる気”をどう維持するか

日本企業の99・7%は中小企業で多くは人手不足。人口減でシニアが今後の労働力として期待され、働き手の意識にも変化が見られる。スタッフサービス・ホールディングス(東京・千代田)が2021年6月に20~60代約1千人に調査したところ、自身が65歳になっても働くと考える人は73・6%だった。60歳で引退は過去の話だ。
 しかしその意欲をどう保つかは大きな課題だ。大手企業は定年延長や定年そのものを廃止するほか、収入を増やしてもらおうと副業解禁などをするが、実情に追いついていない。バブル経済期に大量入社したシニアが定年間近となるなか、そのやる気と活力維持が企業の今後を左右する。
 一般社団法人日本能率協会(東京・港)専任講師の中島克紀氏(64)は、再雇用後の幸福条件に、健康、社外コニュニティーへの所属、金銭的豊かさの3つを挙げる。
(日本経済新聞 11月24日)

60歳以降も常勤で会社勤めをしている何人かに、働きつづける理由を聞いたところ、誰もが「生計を成り立たせるため」「仕事から引退したら毎日やることがなくなってしまう」という回答だった。
公的年金の支給開始年齢が、割増というインセンティブをつけながら引き上げられていく実態を見れば、よほど高額な退職金や企業年金に恵まれていない限り、稼がざるを得ない。現役世代であろうとなかろうと、現役でありつづけなければならない。
一方で、無為の日々を回避する手段としての就労継続も、現実的な選択である。地域デビューを果たすにはもはや手遅れで、溶け込めないことに孤独を感じ、むしろ図書館にこもっていたほうが落ち着くかもしれない。最も慣れたライフスタイルは就労だから、毎日出勤することで心身のバランスに安寧をもたらされる。
 定年後の諸問題は寿命が伸びたことに起因する。前回の東京オリンピックが開かれた1964年、日本人の平均寿命は男性67歳、女性72歳。男性の場合、55歳で定年退職してから余命は平均12年あった。いまはどうだろうか。
 東京オリンピックから56年後の2020年、平均寿命は男性81歳、女性87歳である。60歳定年からの平均余命は、男性では21年もある。老後が拡大したのだ。この間をどのように過ごすか、どのような手段で生活費を賄うのか。すべては長生きの問題である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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