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「後継者不在率」は58.6%、前年比1.0ポイント上昇

中小企業での後継者問題が深刻さを増しているが、2021年の「後継者不在率」は58.62%で前年(57.53%)より1.09ポイント上昇した。
 2020年から猛威を振るう新型コロナウイルスは、10月に入り急速に新規感染数が落ち着いた。感染防止に向けた取り組みが定着するが、多くの企業はビジネスモデルや労務管理の改革を迫られている。コロナ関連支援で後継者問題は先送りされた格好だが、変化への対応に後れを取った企業は今後、事業継続の厳しい判断を迫られる可能性も高まっている。
 代表者の年齢別で後継者不在率をみると、60代が39.2%(前年比1.1ポイント減)、70代が28.2%(同0.9ポイント減)、80歳以上が22.6%(同0.9ポイント減)だった。60代では後継者がいない企業は約4割に達し、代表者が高齢の企業で後継者不在が多い実態が浮き彫りになった。
 後継者「有り」の企業でも、「同族継承」が66.7%を占め親族以外の承継が浸透していない。親族以外への承継の遅れが、後継者不在率を押し上げる一因にもなっている。
(東京商工リサーチ調査報告書 11月18日)

 帝国データバンクも同じテーマの調査結果を発表した。2021年の全国・全業種約26万6000社の調査で、後継者が「いない」または「未定」とした企業が16万社。この結果、全国の後継者不在率は61.5%だった。東京商工リサーチの58.6%とほぼ同水準である。
 業種別では、全業種で前年を下回ったうえに、不在率70%を下回った。全業種で不在率が70%を下回るのは、2011年の調査開始以降で初めて。21年の不在率が高いのは建設業(67.4%)だったが、11年の調査以来となる70%割れとなった。
 後継者不在のまま経営をつづけると、いずれ廃業に向かわざるを得ない。企業数の減少を懸念する経済産業省は、事業承継型M&Aの促進に向けた施策を打ち出しているが、そもそも経営者が一定の年齢に達したら、世代交代を最重要課題のひとつに据えて対策に動く必要がある。
 人生100年時代・生涯現役というキャッチフレーズに後押しされて、第一線で指揮を執りつづけても、老いには抗えない。経営力が衰えるのは時間の問題である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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