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運転手からエンジニアに人材移動

デジタル技術による産業構造の転換を受け、労働市場に変化が起きている。トラック運転手や小売店の販売員など異業種からIT(情報技術)分野に人材が移り始めた。NTTとKDDIは協力してIT未経験者を再教育し、全体で約300人を採用する計画だ。成長産業に働き手をシフトするにはリスキリング(学び直し)の仕組みづくりが課題となる。 「運転手は給与は良いが時間を切り売りする仕事だった。収入の伸び代を考えて転職した」。中部地方に住む26歳の男性は5月から大手電力のシステム子会社で派遣エンジニアとして働く。 (中略)  企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の広がりで労働市場が変化している。日本総合研究所が2025年ごろの雇用者数を予測したところ、自動車の運転手は15年比で11万人減る見通し。販売店員が10万人減、ビル清掃員が9万人減と続く。一方でシステムコンサルタントは38万人増、ソフトウエア開発者は14万人増だった。(日本経済新聞 11月5日)

総務省の労働力調査(2021年7~9月期)によると、1年以上にわたる長期失業者は66万人。4~6月期の72万人よりは減ったが、7~9月期の長期失業者は完全失業者全体の34・6%を占め、コロナ下では最も高い比率を記録した。リーマン・ショック時の08年に長期失業者は120万人だったので、その半数だが、それでもコロナ第6波が襲来して、ふたたび失業者数が増加傾向に転じることも考えられる。 こうした現状を踏まえて、岸田文雄政権が目玉政策として打ち出した「新しい資本主義」には、従来から議論されている労働移動が盛り込まれている。 新しい資本主義実現会議の提言案は、次のような方針を示した。 <職業訓練やトライアル的な雇用、労働移動の支援などについて、人的資本 への投資の支援を強化する3年間の施策パッケージを設け、民間の知恵を求める> <雇用の回復を実現し、多様な人材の能力を最大限に発揮するため、非正規雇用労働者の方々を対象とした再就職や転職に向けた無料の職業訓練の提供、求職者をトライアル的に雇用する事業主に対する助成、在籍型出向を行う際の出向に係る経費の助成等を通じて、産業構造転換に伴う失業なき労働移動の支援を強化する>  リスキングがどこまで進むかが労働移動の鍵だろうが、伸びしろの大きい年齢層でないと、リスキングの成果が付け焼き刃に終わってしまうかもしれない。中高年層は即戦力であることが中途採用の要件だが、リスキング人材が即戦力に見なされるだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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