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退職後もストックオプションを行使できる制度

日用品や食料品を共同購入できるアプリを手掛けるカウシェ(東京・渋谷)は第三者割当増資で約8億1000万円を調達した。事業拡大に向け、社員数を2022年に40人と現状の4倍に増やす。優秀な人材を確保するため、退職後も権利を行使できる有償ストックオプション(株式購入権)の新制度も整える。 第三者割当増資はベンチャーキャピタル(VC)のデライト・ベンチャーズやSBIホールディングス傘下のSBIインベストが引き受けた。エンジニアや営業人材を重点的に採用する。 22年3月には、退職後もストックオプションを行使できるようにする制度を新設する。カウシェが株式市場に上場して6カ月以上が経過することなどが行使条件となる見込み。3年以上在籍した役員と正社員全員が対象で、同社は20年4月に創業したため実際の付与は23年4月以降になる。(日本経済新聞 11月3日)

退職後もストックオプションを行使できる権利が付与されれば、ストックオプションは退職金代わりになる。上場企業は未上場企業よりも人材の流動化を進めやすくなり、ここでも格差の拡大が進みやすい。  そもそも転職が当たり前の時代に、退職金に期待する若手社員は少ないだろう。退職金は長期雇用を前提にした報酬制度だが、中小企業の場合、倒産すれば規定通り支払われないケースは珍しくない。健全経営でない限り、アテにできないのだ。  しかも無事に規定通りに支払われても、大企業とは相当な格差が開いている。大企業の退職金相場は厚生労働省「令和元年賃金事情等総合調査」によると、38年勤務して60歳で退職した場合、退職金相場は自己都合が2660万円、会社都合が2686万円。一方、中小企業の退職金相場は東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」によると、大卒で35年勤務して57歳で退職した場合、退職金相場は自己都合が836万円、会社都合が915万円である。  大企業と中小企業とでは調査した勤続年数が異なるが、およそ3倍の開きがあるとみてよい。生活の違いを調査したら、どんな結果が出るだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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