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転職で賃金増が過去最高――リクルート調査

リクルートが提供する転職支援サービ ス「リクルートエージェント」における 2021 年 7-9 月期の「転職時の賃金変動状況」を報告した。
新型コロナウイルスの感染が拡大を始めた 2020 年 1-3 月期を起点に大きく水準を切り下げたが、翌年 2021 年 1-3 月期にはおおむね感染拡大前の水準近くに復した。足元 21 年 7-9 月期は、そこからさらに伸長し、当統計の始点である 02 年 4-6 月期以降、過去最高値を更新する結果となった。
職種別では、IT 系エンジニアは7-9 月期に「前職と比べ賃金が 1 割以上増加した転職決定者の割合」は 35.0%。 19 年以降は幾分減速感がみられていたが、2このところ大幅 な伸長が続き、過去最高値を更新する結果となった。
機械・電気・化学エンジニアは「前職と比べ賃金が 1 割以上増加した転職決定者の割合」は 25.9%。 19 年以降、下落基調が続いていたなか、2020 年 10-12 月期を底として反発、以降は改善基調に回復。コロナ禍前と比べても高い水準となった。(リクルート作成プレスリリースを要約 11月2日)

1990年代までは、ヘッドハンティングでない限り、転職すれば収入ダウンは必至で、よくて現状維持が多かった。転職する人たちも収入ダウンを覚悟の上で、自分の生活コストから計算して、どこまでのダウンなら転職に踏み切るかどうかを判断することも珍しくなかった。当時は採用側が強く、転職市場は買い手市場だったのだ。
その後、人材紹介会社が力をつけると、当然ながら紹介会社は登録人材を高く斡旋するから、転職による収入アップは珍しくなくなった。人手不足によって需給関係が変化したことも、転職による収入アップが増えた要因である。
だが人手不足でも経済原理の働かない職種がある。社会保障財源から給与が支払われる看護師や介護士だ。社会保障財源に依拠する診療報酬や介護報酬は、経済原理ではなく国の政策で決定するため、看護師や介護士の給与は需給関係で決まるのではない。だから社会保障財源の抑制政策がつづく限り、大幅に給与が上がることは期待できない。
この現状を踏まえて看護師や介護士の給与アップを図ろうというのが、岸田文雄首相の掲げる「新しい日本型資本主義」である。岸田氏は「公的価格評価検討委員会(仮称)」を設置し、看護師や介護士などの給与を見直す方針を発表した。
看護師も介護士も転職の多い職種だが、新政権の方針が具体化すれば、転職のあり方も変わってくるだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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