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「社長の右腕」地方に紹介 金融庁、中小に低コストで

金融庁は今秋からメガバンクなど大企業で働く管理職や専門人材を地方の中小企業に紹介する事業を本格的に始める。転職や出向の希望者を専用システムに登録してもらい、地方企業へのマッチングを担う地域金融機関が検索できる体制を整えた。豊富な経験を持ち、社長の右腕になる人材を中小企業に紹介し、事業改革を後押しする。 金融庁は6月にシステムを完成させた。官民ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)が管理し、10月に人材紹介業を担う地域銀行と信用金庫、提携人材紹介会社に無料開放した。所属する大企業を通じて登録し、現時点のリストでは大手行の行員ら転職や出向の希望者が数百人いる。年齢は30~60歳代と幅広い。大手メーカーや商社など80社ほどに協力を呼びかけ、徐々に登録者は増えている。 (中略)  金融庁が中小企業を対象に実施したアンケートでは、「経営人材が不足している」との回答が66・6%にのぼった。経営人材が必要になった場合、誰に紹介してもらいたいか尋ねると、3分の1が「メインバンクやそのグループ会社」と回答した。(日本経済新聞 10月19日)

 中小企業庁が2019年に発表した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」報告書は、中小企業が求める人材像に言及した。 報告書によると「求められる中核人材カテゴリー」には「背負い系人材」と「専門人材」が存在するという。背負い系人材とは、 高いポータブルスキルと汎用性の高い経営スキルを有するジェネラリストで経営の中枢を担う存在。 専門人材とは、一定程度以上のポータブルスキルと高い専門スキルを有するスペシャリスト的存在。 キーワードはポータブルスキルである。多くの中小企業では、職制がどうであれ、幹部人材がどんな業務にも対応できる多能工でないと務まらない。それも器用貧乏ではなく、専門外の業務にも一定の深さが求められる。 金融庁は大手銀行の行員を地方の中手企業に紹介する模様だが、銀行員には基礎能力の高い人が多い。「銀行出身者は役立たない」という意見も少なくないが、中小企業に転じて活躍している銀行出身者はレアケースではない。銀行出身ゆえのスキルではなく、当人の資質に由来するのだ。  ただ、金融庁のプロジェクトが、中高年行員の余剰人員整理の受け皿として地方の中小企業を活用する構図になることは避けたい。

小野 貴史

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小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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