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外国人技能実習生に雇用指針 搾取批判に対応

 

味の素などメーカーや小売りの約20社が、外国人技能実習制度の運用を巡り、企業の適切な取り組みを定めた指針を策定した。同制度を巡っては、過度な残業が横行するなど海外から「労働者搾取」の批判が根強かった。外国人実習生が多く働く農業や水産業、食品工場などとの取引関係が強い企業向けに指針を定めることで、問題の解消につなげる狙いだ。 指針をまとめたのは、消費財メーカーや小売事業者などの国際団体、ザ・コンシューマー・グッズ・フォーラム(CGF)に加盟する日本企業のグループ。味の素や日本コカ・コーラなど22社が参加した。 指針は「技能実習生・特定技能としての外国人労働者の責任ある雇用ガイドライン」で、外国人技能実習生の適切な受け入れや採用、雇用上の注意点など16項目を定めた。仲介業者が適法か確認したり、実習生が来日する前に雇用条件について説明し同意を得るなどの内容を盛り込んだ。 (日本経済新聞 10月18日)

指針のタイトルに「雇用ガイドライン」となるが、技能実習制度に基づけば正しくは「実習ガイドライン」である。 この10月上旬、厚生労働省の福祉人材確保担当官を取材したが、担当官は「技能実習制度は相手国への技術移転を目的とした実習なので、人手不足対策の雇用制度ではない」と強調した。実態はともかく、制度を所管する厚労省の見解は、あくまで実習なのである。 一方で、厚労省が進めている総合的な介護人材確保対策に「外国人材の受入れ環境整備」という項目が設けられている。 この事業の内容は①介護福祉士をめざす留学生等の支援(介護福祉士修学資金の貸付推進、日常生活面での相談支援等)②「特定技能」等外国人介護人材の受入環境整備(現地説明会等による日本の介護のPR、介護技能向上のための集合研修、介護の日本語学習支援、介護業務等の相談支援・巡回訪問の実施等)③送出し国への情報発信の拡充等。「実習」である技能実習生は介護人材確保対策の対象に含まれていない。 制度は実習・実態は雇用という矛盾は法改正に着手されない限り、いつまでも解消されない。制度に基づく受け入れだから、搾取の是正も制度に由来している。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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