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離職率が入職率を9年ぶりに上回る――厚労省調査

厚生労働省は8月31日、令和2年「雇用動向調査」結果を公表した。5人以上の常用労働者を雇用する事業所から1万5184事業所を抽出して、9032事業所(上半期)と8841事業所(下半期)から有効回答を得た。
入職率は13.9%と前年に比べて2.8ポイント低下。離職率は14.2%と前年と比べて1.4ポイント低下した。 入職超過率 は0.3ポイント。9年ぶりの離職超過となった。
産業別入職率と離職率は、 宿泊業・飲食サービス業が、入職率26.3%、離職率26.9%で離職が超過。生活関連サービス業・娯楽業も入職率15.8%、 離職率18.4%で離職が超過した。
離職率を離職理由別にみると、「個人的理由」(「結婚」「出産・育児」「介護・看護」及び「その他の個人的理由」の合計)が 10.1%。前年と比べると、1.4 ポ イント低下し、「事業所側の理由」(「経営上の都合」「出向」及び「出向元への復帰」の合計) によるものは 1.1%で、前年と比べ横ばいだった。
(厚生労働省プレスリリースを要約 8月31日)

 離職率が入職率を上回ったのは、コロナ禍にともなう離職が増加したからだ。東京都労働局の発表では、都内の有効求人倍率は7月に前月比1.19倍だった。求人数は増えているが、失業者も増えつづけて、求人ニーズと求職ニーズが合致しなければ入職率は上昇しない。
東京京商工リサーチによると、「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1000万円未満を含む)が8月31日時点で、全国で累計2000件に達した。
コロナ関連倒産の第1号が発生したのは2020年2月。約1年6カ月で2000件に達する過程で失業者も大量に発生して、9年ぶりに 離職率が入職率を上回ったのである。新型コロナ関連倒産は今後も続きそうだ。
東京商工リサーチは「対象地域を中心に、飲食店などのサービス業や小売業、これらを取り巻く取引先にも影響が及び、夏場の書き入れ時に厳しい事業環境が続いている。」と分析した。たとえば山梨県によると、山梨県内の延べ宿泊者数は今年1~6月期に前年同期比6・3%減の164万5400人。統計をはじめた11年以降で最小を記録した。
「コロナ関連の金融支援策は継続するが、業績不振が長期化し、過剰債務の問題も浮上している。息切れや事業継続をあきらめて破たんに至る小規模事業者を中心に、コロナ関連破たんは今後も増加をたどる可能性が高まっている」(東京商工リサーチ)
 ワクチン接種が進んでも、現時点で、経済活動の再開にどれだけ寄与するかは不透明である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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