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労働時間、3年で100時間減少――総務省調べ

日本の年間労働時間が大幅に減っている。2020年は1人平均1811時間となり、3年前に比べ116時間縮小した。時間外労働の上限規制導入など一連の働き方改革が動き出したところに、新型コロナウイルスの流行が重なった。働き盛りの世代を中心に長時間労働者が少なくなっている。今後、効率的な働き方がどこまで定着するかが焦点となる。
総務省の労働力調査によると、平均年間就業時間は20年に前年から58時間減った。コロナ禍で起業家通津が滞ったほか、テレワークの広がりなどで働き方が大きく変化したとみられる。
この調査は世帯が対象なので、勤め先が複数ある人の状況も把握できる。働き手が回答するので、データに表れにくい「サービス残業」などにも一定程度反映されると考えられる。
労働時間の減少ペースはコロナ前から加速していた。17年は前年比5時間減にとどまっていたのが18年は25時間前後となっていた。働き方改革で長時間労働の是正が徐々に進んできたことを示す結果ともいえそうだ。
(日本経済新聞 8月14日)

コロナ禍でのテレワーク導入が労働時間を短縮させ、働き方改革を推進するという流れは企業の自主的な取り組みではないが、キッカケは何でもよい。テレワークは感染拡大の悪化でさらに一段と進む気運にあるので、労働時間短縮を一過性の成果ではなく、働き方に定着させる機会と捉えたい。
ひとたび定着したテレワークが従来の出勤へと後戻りすることは、あまり想像できない。オフィスを縮小し、通勤手当も削減してコストダウンを図った以上、この体制でいかにパフォーマンスを上げるかに注力することが今後のテーマになっていく。
その過程でITによる業務効率化が引き続き問われるが、ITが労働時間を増やしているという倒錯した現象も確認されている。
たとえば医療機関。コロナ対策として打ち出された数々の支援策でIT導入の遅れが喧伝されているが、ワクチン接種を行う医療機関では、IT化が業務を効率化させ、労働時間を短縮させる――このシナリオが破綻している
医療機関は政府が運用する「V-SYS」(ワクチン接種円滑化システム)「VRS」(ワクチン接種記録システム)「HER-SYS」(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)にアクセスして接種記録を入力しているが、入力作業が膨大で担当者は夜半までの残業を強いられるケースがあるという。
3つのシステムを統合して、1回のアクセスで全ての入力ができるように設計するなど現場本位への改善が必要だろう。管理する側ではなく管理される側の都合を踏まえた設計でないと業務は効率化せず、労働時間の短縮につながらない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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