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テレワークを定着させるには?青野慶久サイボウズ社長

テレワークの定着が遅れている。東京都での緊急事態宣言を受け、足元では大企業を中心に在宅勤務が再拡大する。だが過去3回の宣言解除後、生産性の低下などを理由に出社前提の働き方に戻った企業は少なくない。10年以上前から取り組み、常時従業員の8~9割がテレワークで働くサイボウズの青野慶久社長に定着する秘訣を聞いた。――テレワーク定着に悩む企業が多いです。「制度と企業風土、ツールの3つをそろえることが大事だ。テレワークは非常時だけのものではないと意識してもらい、生産性が上がらないなら適切なツールを導入する。人事評価も就労時間や実績、スキル、周囲に与えた影響など様々な要素を加える必要がある」「コツはいきなり完成形を目指さないことだ。小さく始めて従業員と対話をしながら変えていけばいい。我々も10年前はおっかなびっくり始めた。最初は事前承認や日報の提出を義務付けていたが、途中で従業員の負担が大きいと気が付いて任意に切り替えた」(中略)「自由な働き方を認めることで多彩な従業員が集まる。様々なスキルや人脈が持ち込まれ、企業の競争力につながる」
(日本経済新聞7月22日)

テレワークの導入には煩瑣な要素が多く、先行している企業の事例を参考に取り組むことが現実的だ。先行している企業のひとつが、コロナ以前からサイボウズである。同社のサイトには、テレワーク導入による試行錯誤を経て確立したノウハウが紹介されている。テレワーク制度の指針として2017年に「リモートワークガイドライン」を策定し、①リモートワークガイドラインの適用範囲②リモートワークを行う場所やどの様な仕事がリモートワークに適用されるか③やめてほしいリモートワークの実施方法④リモートワークする上で必要な手続き――などを盛り込んでいる。
さらに同社では、部内・チーム内でも必要に応じてテレワーク上のルールを作成しているうえに、「スケジュール登録」に、有給休暇の登録や、フレックスタイム制に対応して始業・終業時間の変更を登録するルールが設けられている。リモートワークの普及は転職意識にも影響をおよぼし、リモートワークが導入されていない企業は採用では不利になりつつある。この記事で青野慶久氏は「自由な働き方を認めることで多彩な従業員が集まる」と述べているが、これからの採用では自由度の格差が重視されていく。拘束から解放への転換ができるかどうか。経営陣が思考を切り替えないと難しい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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